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1月18日(日) 午前 ワシントン
チケットをとうとう手に入れた。連邦議事会議事堂を背景に
ジャーナリスト 津山恵子
第44代アメリカ合衆国大統領バラク・オバマの就任式チケットをついに手に入れた!!
オバマの署名入り写真と、オリーブの枝と矢を持つ鷲の米大統領の紋章が金色で浮き彫りになったプログラムも、いただいた。
「アメリカ合衆国正副大統領の就任式に、あなたのご臨席を賜りますよう、お願いいたします」
と書かれている。悪い気はしない。
これに先立ち、今日は午前3時のニューヨーク発高速列車に乗って、ワシントンに出発。駅に向かう途中に雪がちらつき、地下にある特急アムトラックの駅は、暖をとる黒人の浮浪者が今までにみたこともないほどたくさん、そぞろ歩いたり、通路の脇でお休みになっている。
列車に乗ると、ニューヨークよりも前の停車駅からの乗客でいっぱい。二人分の座席に体を伸ばして寝ている人が多いため、残りの席は争奪戦になった。やっと座って、寝たとたん、ぐおーっ、ひゅー、ぴー、という近くの男性のいびきで起こされ、4時半ごろから全く眠れなくなった。
ワシントンに7時到着。気温は零度。ニューヨークよりは暖かい。
メディアのチケット配布の場所は、就任式が開かれる連邦議会議事堂のそばにある、ラッセル上院議員ビル。
ヒラリー・クリントン、ジョン・マケイン、2004年大統領選民主党候補だったジョン・ケリーらの事務所がある。入口は総大理石の高いドームがどーんと空(くう)を突き、金属探知機を通って、日曜日でがらんとしたビルに入った。
3階のチケット配布場所にたどり着くまで、興味津々。なにしろ、日本の議員会館アメリカ版だからだ。
日本のように各議員の名前が部屋のドアちかくに書いてあるということはない。
「SR007」などといった番号プレートだけ。しかし!ジョン・ケリーなど古参議員になると、プレートがあって金字で名前と選出州が書いてあるばかりか、アメリカ国旗も立っている。
「シニアリティ」(Seniority)という言葉を思い出した。
先週のニューヨーク・タイムズによると、上院議員になる前歴が下院議員や州知事でない新米議員は2、3年「まるで存在していないかのように扱われる」そうだ。自由と平等の国で、列記とした「年功序列」だ。
ヒラリーが次期国務長官となるため、空席となる上院議員職に、故J.F.ケネディの長女であり、本格的な政治的前職がないキャロライン・ケネディが名乗りを上げていることについての解説記事だ。
キャロラインはさておき、オバマは、上院で当選時唯一の黒人であったばかりでなく、6年の任期は一期も終えていない。当然のことながら、議員会館の事務所には名前のプレートなどなく、「議員ナンバー●●」という類だったにちがいない。
その彼が、誰もが夢見る合衆国のトップに上りつめるというのは、年功序列をまざまざと見せつけるこのビルの中で、「心底」驚いている人が、与野党ともにたくさんいるのだろう。
午前9時45分。10時からのチケット配布開始に、部屋の前にはすでに10数人の記者やカメラマンが並んでいた。
部屋に入ると、「カメラマン」「定期刊行物」「プリントメディア」「ラジオ」と手書きの紙が貼られたテーブルが4つあり、パソコンは1台もなし。分厚いファイルに、メディア名のアルファベット順に記者証申請書がまとめられ、若い事務員がぽつんぽつんと座っている。何だか、非常に寂しく、ちょっと古風。「ちょっと、ホチキスどこ?」などと言う会話が高い大理石天井に響き、町役場のようだ。
パソコンなし。ホチキスを探しに行った事務員を待つ女性記者
ところが、私の前の記者たちはかなり長く注意事項を聞かされている。ここで、ダメと言われたら、就任式の取材はできなくなる。ほかの記者も申請書とパスポートを握りしめ、緊張の面持ちだ。
私の番が来て、AERAはAで始まるため、すぐに申請届け出書はみつかった。パスポートで名前を確認し、パスポート番号を書きうつされ、
「議会のルールに従って、取材します」
という内容の覚書にサインをさせられる。
「これで全部OKだね」
と言われ、チケットを渡された。
そうはいかない。過去のオバマ選挙取材で、ペットボトルやハンドクリームなど持ち物制限でいやな目にさんざんあっている。しかも今度は大統領就任式だ。
「カメラは持ち込んでもいいのでしょうか」
キャノンのデジタル一眼レフを見せる。
「これは大丈夫だけど、レンズが長いから、なるべく小さいのにして。規定ではカメラは15センチ四方以内。小さいほうがセキュリティを通りやすいから」
「パソコンもいいのでしょうか」
「見せてください」
パナソニックのB5ノートPCを見せる。これは、アメリカ人記者や無数のブロガーが持ち歩く、A4のばかでかいパソコンに比べたら、チワワみたいなもんだ。
「OK。とにかく、バッグもカメラも小さければ小さいほど、トラブルを避けられるので・・・」
このやり取りを終って、チケットを入手すると、午前3時から続いていた緊張が一気に解けた。
そこで、ワシントンは広くて、ニューヨークのようにすぐにスターバックスやマクドナルドがあるというわけではないので、化粧室を探した。
なんと!上院議員ビルは、男性のトイレが各階に4つあるのに、女性の化粧室は2つしかなかった。探して探して大理石の廊下を100メートルほど歩いた。20年前に取材していた福岡の警察署で、刑事部屋の階は、女性化粧室がなかったのをなぜか思い出した。
チケットは取ったものの、1時間もせずに前途は多難なことが・・・。
朝日新聞出版から新刊、「オバマの真実」が発売されました。
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