オバマ大統領就任現地ルポ

2009年01月21日

1月20日(火) ワシントン・ナショナルモール (後半)

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就任式:実はこんな壁がたちはだかっていた


ジャーナリスト 津山恵子


午前8時、とうとう列が動き始めた。会場へのゲートが開いたのだ。

並んでいた国立航空宇宙博物館前から約300メートル、足早に進むと、国立アメリカ・インディアン博物館の角で、人々が、会場のナショナル・モールに向かって走り出した。


設置されると思っていた金属探知機はなく、約100メートルに渡って、会議机がずらりと並び、手による荷物検査だ。

その作業に驚いた。蓋が閉まっているものはすべて開ける。

パソコン、メモリーカード入れ、名刺入れ、パスポート入れ、キーホルダー―若い警備員がリズミカルにすべて開けていって、あるもので、手が止まった。

小銭を入れていた日本のガマ口だ。

「OK。ユー・オープン」

吹き出しそうだったが、ガマ口を開けた。

「GO」


この8時過ぎから、就任宣誓が行われた正午までが、心底寒かった。

スラックスの下には、タイツに靴下2枚。コートの下に、兎の毛皮のベスト。その下に、パタゴニアなどアウトドア・アパレルの保温シャツなどを5枚重ね着している。 しかし、地下鉄を降りた時からもう手足の先に感覚がない。

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固まってあたたまろうとする子供たち

人々が集中している大型スクリーンの前に陣取る。

まわりは、キルトのベッドカバーや、複数の毛布、シュラフまで持ち込んで、顔まですっぽりかぶって待つ人もたくさんいて、またまた準備不足が悔やまれる。


ほどなく、隣にいた華奢な感じの黒人女性が地面に座り込んだ。顔を膝につけて動かない。見たところ、ハイヒールのブーツだし、ファッション重視の薄着のいでたちだ。

「大丈夫?」

「ロサンゼルスから来たの。あっちは、お日さまがあったかいのよ。こんなに寒いなんて。歴史的な瞬間の証人になろうと思って来たけど、今はうちに帰りたい」

デレイナというマスコミ志望の25歳。余計に持ってきた使い捨てカイロを渡すと、目が潤んだが、

「これ何?いくら払えばいいの」

と聞かれ、呆然。

そばの黒人のおばさんが、

「持ってればあったかくなるのよ」

と、カイロを彼女の手袋の中に押し込んだ。


一時は微動だにしなかった彼女がすっくと立ち上がり、ぶー、だの、イエス!と声を絞って言い出した時は、その豹変ぶりにびっくりした。

午前11時過ぎ、連邦議員、連邦最高裁判事などが次々に、議事堂バルコニーに着席し始めたときだ。さすがにマスコミ志望だけあって、誰が登場したのか、固有名詞やスペルまで逐一教えてくれた。

ぶー、と言えば共和党で、イエーイ、は民主党だ。


そして、オバマの登場。

特別車で議事堂に着き、廊下を歩いている様子が最初にちらっと、ほんとうにちらっとだけ、スクリーンに映った。

すると、周りの人々がいきなり活気づいた。ばさばさと毛布をはらって、一斉に立ち上がったため、もうもうと砂ほこりが立つ。

「キャー!」

「オ・バ・マア!!」

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オバマをみると自然に笑顔が......

誰もが満面の笑みだ。


この熱狂ぶりにはいつも驚かされる。

目撃者としては、生オバマを見ることよりも、この人々のオバマに対する信頼と、愛着と、期待に増幅される、表情や歓声に、結構じーんとくる。まるでみな、子供のようになるのだ。


就任演説も、ケネディやリンカーンのような、永遠に語り継がれるであろう強いフレーズはなかった。

一言で言うと、「アメリカをリメークする」そうだ。

そこまで、ブッシュ政権のやってきたことをこきおろすのか、とも思った。

選挙中の演説のように分かりやすい言葉でぐいぐい引き込むのではなく、あらゆる面に配慮した構成のレクチャーみたいだった。

しかし!周りの黒人やヒスパニックの人の目は潤み、涙が流れた筋は、ファウンデーションがおちて、色が変わっているのだ。


式が終わり、議事堂正面から、ブッシュ夫妻が乗ったヘリ、マリンワンが、自宅であるテキサス州の牧場に向けて飛び立った。

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ブッシュ前大統領のヘリに、手を振る

会場の上をヘリが通る時、帰り始めていた人たちが、

♪ナナナナナー、グー・バーイ(曲名不明)

♪ソーローング、フェアウェール(サウンド・オブ・ミュージックから)

と歌って、手を振った。


この場面は、ほかの何よりも、新旧大統領の交代を象徴していた。私にとって。



その後・・・。

道路封鎖と、地下鉄駅閉鎖のダブルパンチで、パレードを取材に行くという計画は断念。またまたプランB。歩きに歩いて、同じ方向に向かう人たちと情報交換し、助け合い、地下鉄にやっと乗ったのは、式典が終わって約3時間後だった。

ロジが狂いっぱなしの1日。最後に頼れるのは、自分の足と、心ある人々だ。



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