松本佳子[業界コンフィデンシャル]

2010年03月02日

情念で演じる数少ない女優/おめでとう! 寺島さん

「キャタピラー」という作品で、ベルリン国際映画祭で日本人として35年ぶりに最優秀女優賞を受賞した寺島しのぶさんには、エロい女優さんというイメージをもっていた。NHK大河ドラマ「龍馬伝」で、福山雅治さん演じる龍馬の姉を演じていてもなんだかエロく思えるし。

 とびきりの美人というわけではない。父は歌舞伎俳優の尾上菊五郎さん、母は女優の富司純子さんというサラブレッド。梨園に生まれたということで松たか子さんとよく比較されるが、まったく系統が違う。

 犬のお散歩中だった富司さんを直撃させてもらったことがある。犬のお散歩にもかかわらずきちんとした服装で、姿勢がよく言葉遣いも上品だった。一方、寺島さんを見かけたのはホテルのラウンジだったが、豪快にお酒を飲んで、豪快に笑っていた。母娘でタイプが全然違う。

 全裸ラブシーンが話題となった「赤目四十八瀧心中未遂」という作品への出演をめぐって、出るなら自殺するという母と、出られなければ自殺するという娘の葛藤があったと聞く。

 かつて母は「緋牡丹博徒」という映画で、もろ肌脱ぐのはイヤだと拒否したそうな(切りつけられた着物から背中が見えるだけという演出に)。そんな慎み深い日本女性である富司さんにとっては、娘が全裸で濡れ場を演じるなど、到底理解できなかったのだろうが、結局娘は押し切った。そして女優として高く評価されることに。同じ年に公開された「ヴァイブレータ」も、大胆な性描写で話題になったのだが、このあたりから彼女の女優としての凄みが増していく。

 世間体やら係累やらを気にする常識的な感覚ほど、女優の足かせになるものはない。日本では、人気先行でアイドル的な女優が増え、情念で演じる女優はいまや少ない。女優という仕事に人生を賭ける彼女が世界で評価されるのは当然だ。

キャタピラー , ベルリン国際映画祭 , 富司純子 , 寺島しのぶ , 福山雅治 , 赤目四十八瀧心中未遂 , 龍馬伝

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