本上まなみ[落としぶたと鍋つかみ]

2012年02月15日

ホテルの朝ごはん、の巻。

 先日、山梨県にあるリゾートホテルに泊まりました。雪を眺めながらの温泉やプールも楽しかったけど、とりわけ心に残ったのは朝ごはん。ビュッフェ形式だったのですが、長いテーブルに野菜料理がずらっと並んで出迎えてくれたのだ。わあー! すごいなあ!
 昔から野菜好き。うちの冷蔵庫の野菜室には、常に十種類は入っているであろう。どんどん買ってどんどん食べるのです。野菜が減ってくると頼りない気持ちになるのは、うさぎ年生まれだからかなあ? それはわからないけれど、ホテルの朝食ビュッフェで、野菜たちに目移りして困った経験というのは、生まれて初めてです。
 ぱりぱりしゃきしゃきのサラダは、レタスにハクサイ、人参、紅芯大根、カブ、キュウリ、トマトのミックス。温野菜のブロッコリーやカリフラワー、レンコン。炭火焼きは紅色の人参やパプリカ、カブ、タマネギなど。スープも二種類、ミネストローネとカボチャのポタージュ。
 焼きたてパンも次々に運ばれてきましたよ。ゴマパン、白パン、雑穀パン、クロワッサンにチョコクロワッサン。パンカゴの前には、ぶどうジャムと桃ジャム、金色の蜂蜜がつやつやと魅力的に。山梨といえばフルーツ王国。ぶどうや桃はその代表格ですよね。ジャムたちはいかにもおいしいですよ、という光を放っている。
 そのほかにベーコンやソーセージ、卵料理、ジュースなども。
 いいなあと思ったのは、料理が並ぶ大きなテーブルのところどころに「近くの農園からきました」「地元産です」などという手書きのメッセージがあったこと。
 それは、お皿に盛られた新鮮な食材たちをさらに輝かせ、山梨はこんなに豊かな土地なのですよということも紹介する、特別な効果がありました。
 本当に、どれもおいしかった。何度もおかわりをしてしまいました。

 ホテルの朝ごはんというのは、テンションが上がるもののひとつだね。
 まあ、くいしんぼうですからね。何が食べられるのかなあとわくわくするのはもちろん。でもそれ以上に、お部屋に入ってシャワーして眠るだけじゃわからない、「ここのホテルのキャラクター」を知ったり体験するのが嬉しいのです。
 旅館だとお世話をして下さる仲居さんと話したりして宿のことを知るチャンスがあるけれど、ホテルはそういうのがあまりないから、余計に気になるし興味がわくのかもしれません。
 当然ながらホテルの数だけ、朝ごはんも違います。ビュッフェ、定食スタイル、ちょっぴりつまめる軽食スタンドみたいなものもありますね。
 私がこの仕事を始めた10代の頃は、まだ東京に部屋を借りる前。その都度、地元大阪から上京して、キャスター付きバッグとともにビジネスホテルを渡り歩いていました。仕事先の方が手配してくれていたので新宿に二泊、そのあと恵比寿、次に目黒、みたいな感じでうろうろ。
 このころが一番ホテルの朝ごはんを食べていた時期と言えましょう。
 ほとんどがビジネスホテルでしたから、一階に併設された喫茶店のモーニングセットというパターンが多かったなあ。ちょっと厚みのあるトースト、溶けたバターがしみていて、おいしいんだよね。さっと席につき、ぱぱっと食べながら新聞を読むビジネスマンに混ざって、私も新聞を読み読み食べました。ホテルによってオレンジジュースやキャベツの千切りがあったり、ゼリーがついていたり、卵は食べ放題だったり、いろいろでおもしろかった。ビジネスホテルの朝ごはんというのは、何よりスピーディーに食べられることが重要視されるので、席に座ったらすぐ出てくるというのが特徴だね。手際良く働いておられるウエイターさんたちの姿も好ましい。
 ちょっぴり立派なホテルに泊まったときは、日本料理のレストランの朝ごはんを食べるのも楽しい。ふわふわの出し巻き卵に、納豆、干物、おひたし、湯豆腐、おしんことかがついていて、お味噌汁にごはん。ちょっとタラコがあったりしたら最高ですね。
 海外も、いろんな朝食があったなあ。
 保温ポットにコーヒー。もうひとつのポットにミルク。そしてナフキンをかぶったクロワッサン。パリのちっちゃなホテル、フロント横のスペースで提供された朝ごはんです。よかったらご自由にどうぞ、といった風情でそこにありました。控えめでさりげないけれど、ちゃんとおいしいものが揃っていたよ。こういうの、ありがたいなあと思う。気持ちのよいスタートが切れますよね。
 香港のホテルは土地柄か、セイロがなにくわぬ顔で並んでいました。中にはほかほかのシュウマイや海老蒸し餃子。そしておかゆ。おかゆのトッピングが10種類! 日本ならせいぜいおじゃこと昆布と梅干しといったところですが、香港人はおかゆにより情熱を注いでいることがわかった朝ごはんでした。
 バンコクでは小碗の汁そばが。こちらも麺が3種類あって、えーどうしよう! って。大好きなんだよなあ。結局後悔しないよう、わんこそばみたいに3杯食べてしまい、午前中はお腹が苦しすぎて横になっていました。
 ストラスブールでは、何種類ものハムやチーズが並ぶビュッフェがありました。それにクグロフも。クグロフは、まんなかがくぼんだ独特の型で焼くお菓子のような、伝統ある甘いパンです。マリーアントワネットも好んだというもの。名前は知っていたけど、おおこれがあのクグロフか! と感激しました。

 朝ごはん。相対的に、海外の方が大胆にざっくりした感じで「たんと召し上がれ」なイメージがあります。ちまちましてないところが好きだなあ。
 目が覚めたら顔を洗って、服を着替えて、きゅっきゅと髪を結んで、背筋をしゅっと伸ばして、さあさてさて。
 ホテルに泊まるたび、朝ごはんを食べるたびに、へえ、ほほう、ふむふむといろんな発見がある。それが楽しくて、いつも違うところに泊まりたくなるのであります。朝ごはんの会場で、おはようございます! とにっこり笑って迎えてもらえると、期待がぐぐぐっと高まります。

本上まなみ

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