特ダネ記者魂

2008年07月29日

「長銀無罪」司法は仕事をしたのか 失敗を教訓にしない我がシステム

[山田厚史の特ダネ記者魂]

刑事責任を問われた旧日本長期信用銀行の経営者に最高裁は7月18日、「無罪」を言い渡した。その4日前、最高裁は日本歯科医師連盟のヤミ献金「橋本1億円事件」で、官房長官だった村岡兼造氏に責任をかぶせる決定を下したばかりだ。

橋本龍太郎首相(当時)が野中広務自民党幹事長(同)、青木幹雄参議院議員と一緒の宴席で受け取った1億円の小切手がヤミ献金として処理され、検察は現場にいた重鎮の責任を問わず、引退した村岡氏に的を絞った。判決後、野中氏さえ「村岡さんがスケープゴートになった」と言った。村岡氏の言葉も印象的だ。

「一審で無罪を言い渡した裁判長は『今、桜が咲いています。今後のことはどうなるか分かりませんが、せめて今晩一晩ぐらいは桜を楽しんでみてはいかがでしょうか』といたわってくれたが、今となっては別の意味に聞こえる。『二審はダメよ、最高裁はもっとダメよ』と予告していたのかも知れない」

長銀の経営者は、大蔵省が通達した不良債権の処理基準を守らず損失を過小に公表していたとして、一、二審で有罪判決を受けた。最高裁は、通達は「目安」でしかなく多くの銀行で守られていなかった、長銀だけを責められないという。公正な株式市場を維持するなら粉飾したすべての銀行の責任を問うのが司法の仕事だろう。ホリエモンのような成り上がり者には厳しいが、大銀行の暴走にはお咎めナシということか。

銀行を軒並み罰すれば、差配していた大蔵省の責任も問わなければならず、蔵相や政権の責任に議論が波及しかねない。自民党中枢への波及を恐れた「ヤミ献金」と構図は似ている。

破綻銀行だけが「国策捜査」の餌食になり、それも10年たって無罪放免である。金融破綻が火を噴いていた頃、「失敗の原因と責任を国会で明らかにせよ」と私は主張したが、「火が燃えている。責任を論じている場合か」との声にかき消された。事態が沈静しても「失敗の教訓」は吟味されず、ついに責任までうやむやになった。






国策捜査 , 山田厚史 , 日本長期信用銀行 , 村岡兼造 , 橋本龍太郎

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