特ダネ記者魂

2009年05月19日

なぜ聞かない? なぜ書かない? 報道不信煽る「取材先与党」

[山田厚史の特ダネ記者魂]

民主党の小沢代表の辞任をテレビで見た。

「悲しいね、この姿、国民に見られているんだよ」。同僚がつぶやいた。小沢さんではない。質問する記者の姿勢だ。「これについて教えて下さい」なんて言葉が出るほど。お伺いするといった風情である。

「いま辞めたら、あなたの宿敵検察が喜ぶだけでしょ。負けたことになりませんか、というぐらいのことを聞けないかね」と私がいうと「政党記者の会見なんてこんなもんですよ」と誰かが言った。西松建設の「に」の字も出ないまま会見は終わった。  記者会見は読者に代わって記者が質問する場だ。言葉の刃を切り結び、急所を突いて、相手が言葉に詰まる、声を荒らげたりする。「地金」を引き出すのが仕事ではないのか。

私はそうやってきた。「山田を外してくれ」と手を回されたことも何度かあった。取材先に爪痕を残すのは記者の勲章と思ってきた。記者も草食系が多くなったのか。

朝日新聞の「声」に報道姿勢を問う投書が最近、載った。いずれも小沢の献金疑惑に関するものだ。「なぜ検察の強引な捜査の内実や問題点を報じないで、リーク情報を垂れ流すのか」という趣旨だった。5月4日付の投書は「週刊朝日の権力に迎合しない編集姿勢は市民の側に軸足を置いている......朝日新聞は新聞の使命である権力を監視する基本姿勢を貫いてほしい」と指摘した。

記者クラブで濃厚な接触をするあまり、思考回路まで取材先に同調する記者は少なくない。権力者との「信頼関係」が勝負を左右する取材競争で、リークは特ダネを生む金の卵でもある。情報の出し手はどの媒体に載れば効果的か判断して、漏らす。

民主党の小沢にマイナスな情報なら産経新聞より朝日新聞に大きく載ったほうが打撃は大きい、と考えたとしてもおかしくはない。

担当記者には山ほどの言い分があるだろう。しかし読者は不満に思っている。「新聞が取材先与党なら読む必要はない」と離れていった人は少なくない。

小沢一郎 , 山田厚史 , 朝日新聞 , 民主党 , 週刊朝日

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