特ダネ記者魂

2009年05月27日

救急医療の不備が深刻化するいま、自衛隊医官活用を

[田岡俊次の特ダネ記者魂]


第1次大戦末期の1918年4月、フランスに展開した連合軍に発生した、「スペイン風邪」は世界で2千万人、日本でも39万人の死者を出した。同大戦の死者は軍民合計1460万人とされるから、戦争を上回る犠牲者だ。今回の豚インフルエンザは弱毒でも強毒性に変異しかねないからまだ油断はできまい。

これに対し、成田空港で水際防御に当たったのは主に自衛隊の医官(軍医)、看護師たちだ。成田には常勤医師が14人いるが、通常の検疫業務も多いため機内に入って検査するには手が足りない。このため陸上自衛隊と防衛医大から医官11人、看護師41人が派遣され、中部、関西空港にも自衛隊の看護師各5人が出た。5月8日、成田で初の感染者と確認された大阪の高校教員、生徒計3人を発見したのは防衛医大教授の1等海佐だった。アメリカ方面からの到着便は午後に30便が集中するうえ、時間が前後したり、着くゲートが変わることもあり、検疫チームは広い空港内を駆け足で移動するハメになるが、野外演習もする「軍医」「衛生兵」には苦ではなかろう。

自衛隊では戦闘の負傷者に備え、編制定数では中隊(約200人)や艦1隻ごとに医官が配置される。制服医官の予算上の定数は1160人、実員は820人だが、背広の教官などを加えると千人以上の医師がいる。平時に部隊の診療所にいても隊員の多くは若くて健康、患者が少ないため医官は退屈し、「これでは医師の腕が上がらない」と、防衛医大を卒業し2年の研修後9年、の義務年限終了を待たず、学費の一部を返済して転職する医官が多い。このため全国16カ所の自衛隊病院や上級司令部の衛生隊に医官を集中配置し、研修の機会を増やしている。

一般の病院が最小限度の医師しか雇えない中、自衛隊医官は貴重な予備戦力だったことが今回わかったが、救急医療の不備が深刻化するいま、一部を除き自衛隊の病院が救急車の搬送先にならないのはもったいない。防衛予算で運営し、診療費は国庫に入るのが理由だが、工夫の余地はありそうだ。

インフルエンザ , 田岡俊次

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