特ダネ記者魂

2009年06月09日

「公海の自由」は守られるべき/重大な国益

[田岡俊次の特ダネ記者魂]


北朝鮮の2回目の核実験は、前回の核実験後に国連安全保障理事会が採択した「核実験または弾道ミサイルの発射をこれ以上実施しないことを要求する」という決議1718に反し、安保理が制裁を強化するのは当然だ。だが、公海上で船を検査しようとの日米の提案には首を傾げた。

公海上の船はそれが登録されている「旗国」の主権に属するのは古来の原則で、国連海洋法条約も「船舶は公海上においてその国(旗国)の排他的管轄権に服する」と定めている。軍艦や巡視船が公海上で他国の船の貨物を調べることは、少なくとも平時には、できないのだ。だから、米国が提唱したPSI(拡散に対する安全保障構想)でも公海上の船舶検査は旗国の承認をえて行うこととし、実際には疑わしい船がこの構想に参加する国の港や領海に入った際に検査している。前回の安保理決議でも「国際法に適合する範囲で」北朝鮮に出入りする貨物の検査を行うよう各国に求めていたから問題は起きなかった。だがもし今回、北朝鮮など検査を認めない国の船も公海上で検査するような安保理決議がでれば、すでに確立した国際法と矛盾が生じる。

外務省は「国連憲章第103条で憲章に基づく義務と、他の国際協定に基づく義務が抵触する場合、憲章が優先、と定めている」と説明するが、憲章第1条は国際平和と安全を「国際法の原則に従って」維持することを国連の目的としているから、既存の国際法に反するような決議には疑問の余地がある。

何世紀もの慣習法や、世界の専門家が何年も討議し国連が採択した海洋法条約などの多国間条約の条項が、安保理での駆け引きや雰囲気で生まれる一片の決議で無効になるのは変だ。常任理事国は自国に不都合な決議案に拒否権を行使できるが、それ以外の日本などの国々は、既存の条約や慣習法で守られない無権利状態になってしまう。海上交通に生存を頼る日本にとり「公海自由の原則」は重大な国益であり、自らこれを危うくする先例を生むのは長期的に得策ではなかろう。

公海 , 北朝鮮 , 外務省 , 田岡俊次

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