特ダネ記者魂

2010年06月15日

政権の運だめし/小泉の置き土産が菅を悩ませる

[山田厚史の特ダネ記者魂]

 もう古い話だが、安倍晋三首相(当時)は「お帰りなさい」と除名されていた郵政議員を迎え入れた。そこから小泉人気に支えられた自民党の凋落が始まった。鳩山政権は日本郵政の社長人事で、政権を握り切れない「器の小ささ」が分かってしまった。こともあろうか「大蔵省のドン」斎藤次郎・元大蔵次官を据えた亀井静香郵政担当相を抑えられなかった。「脱官僚」「天下り禁止」だった民主党のイメージは大きく傷ついた。

 さて菅首相も「郵政」で揺さぶられている。亀井・斎藤で練り上げた郵政改革法案の処理が危うくなっている。国会の会期末が迫り、この法案を通すには、審議を吹っ飛ばして強行採決するしかない。国会を少しばかり延長しても結果は同じだ。だが国民新党は「なにがなんでも参院選前に」と政権離脱をちらつかせ、法案成立を迫っている。

 民主党内部は複雑だ。郵政改革への基本姿勢が定まっていない。「郵便局を維持するためには郵貯の限度額を2千万円にすることはやむを得ない」という意見や「政府が後ろ盾の郵貯・簡保を肥大化させたら、大変なことになる」などの声もあり、収拾がつかない。もともと「郵貯の規模縮小」を掲げていた民主党である。国民新党に引き回される郵政法案には違和感があった。しかし、内部で政策を詰めないまま「郵政問題」は国民新党を連立に組み込む担保として差し出してしまった。

 小沢一郎氏の政略から生まれた構図である。国民新党を支える郵便局長たちは選挙にめっぽう強い。その力をかつて実感しているだけに、集票力が自民に流れるのを恐れた。手を組めば、国民新党が立たない選挙区で民主党候補が応援をしてもらえる。選挙を勝つために妥協した結果が「大蔵省ドン」の復活と郵政法案だった。

 だが強行採決までして国民新党に花を持たせるべきか。迷う菅執行部の背中を押したのが「政権支持率」である。10日に新聞各社が発表した数字は軒並み60%を超えた。期待されているうちに選挙をしたい──。その前に強行採決などもってのほか。ここは亀井さんに泣いてもらうしかないが、下手をすれば「国民新党の離脱」にも発展しかねない。

 政治決断は常に政局がらみだが、原点を忘れては困る。肥大化させた郵貯・簡保のカネは誰が何に使うのか。採算はとれるのか。あれほど大騒ぎした問題である。

 追い風に乗り「ここは勝負どころ」と菅首相は打って出る構え。政権の運だめしである。

亀井静香 , 安倍晋三 , 小沢一郎 , 斎藤次郎 , 菅首相 , 郵政問題 , 鳩山政権

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