特ダネ記者魂

2010年10月26日

後継者より重大/北朝鮮の新ミサイル「ムスダン」の威力

[山田厚史の特ダネ記者魂]

 10月10日、北朝鮮軍の観閲式に登場した弾道ミサイル「ムスダン」は燃料を入れたまま待機し、発射準備に10分ほどしかかからないと見られるだけに、航空攻撃などによる発射前の破壊はきわめて困難。北朝鮮はパレードに移動発射機8両に載せた「ムスダン」を出し、実用性のある核ミサイルが配備状態にあることを誇示した。

 このミサイルは旧ソ連で1967年から配備が始まった弾道ミサイル原潜「ヤンキー級」(9300トン、16発搭載)用に開発されたR27(NATO名SSN-6)を基礎にしたものとされる。1990年代初期にスクラップ化した「ヤンキー級」とともに、北朝鮮が購入したようだ。旧ソ連は、米国のように完全に均質で安定した燃焼をする固体燃料ロケットを造る技術で遅れ、液体燃料に頼っていたが、即時発射は不可欠だから「貯蔵可能液体燃料ロケット」を多用した。硝酸系の酸化剤は金属を腐食させるから、ビニールの袋に入れてタンクに詰め、しばしば分解して点検、バルブなどを交換する必要があった。潜水艦の船体にタテに収めるため、全長は9メートルに制限され、かなり無理な設計だった。北朝鮮ではその制約がないため全長は12メートルに伸びたが、それでも「ノドン」より3.5メートル短く、トレーラーによる移動が容易だ。射程はグアムに届く約3千キロと推定され、搭載能力は1トンあまり、核弾頭をこの程度にまとめるのは簡単だ。

 中国との国境に近い山岳地帯のトンネルにひそみ、出てきて10分程度で発射可能だから、「ノドン」のように立ててから燃料を入れるのに時間を要するものとは、武器として大違いだ。北朝鮮沖から巡航ミサイル「トマホーク」を撃っても弾着まで15分、韓国の基地から航空攻撃をしても少なくとも20分以上かかる。大型無人偵察機に空対地ミサイルを付け、常に山岳地帯上空を旋回させれば撃破の可能性もあるが、平時にやればもちろん違法だし、タリバーン相手と違い、撃墜される可能性が高い。金正恩氏より「ムスダン」の登場の方が重大とも思われる。

タリバーン , トマホーク , ノドン , ムスダン , 北朝鮮 , 巡航ミサイル , 弾道ミサイル , 金正恩

バックナンバー

アエラ最新号

2012年5月21日号

2012年5月21日号

最新号キーワード

民主崩壊 「火葬希望」は陛下最後の「革命」 「脱・不機嫌」で仕事力アップ 貧困日本の消えた子たち ツリー、タワー、富士山一望スポット20 「3・11」で小学生に携帯解禁派 格差社会の女子会「短命」事情 橋下ブレーン グリーが狙うコンプガチャ後の一手 窪田 良

2012年5月21日号
定価:380円(税込)
表紙:田中慎弥/作家

雑誌を購入

デジタル雑誌を購入

から検索
から検索