2008年09月25日

事故米「親子」横流し人生

もはやコメすら信じられない

編集部 田村栄治、加藤勇介


「上手にやればもうかる、十数年やってその方法を熟知している、と教唆された」

カビや農薬で汚染された米が「食用」として流通し、食品への信頼が大きく損なわれた、事故米の転用問題。「横流し」した量が1000トンを超す三笠フーズ(大阪市)の冬木三男社長は、発表した「釈明文」で、ある人物から指南を受けたことがきっかけだったと述べた。

その人物とは、三笠フーズで非常勤顧問をつとめる宮崎一雄氏(76)だ。

宮崎氏は、三笠フーズに入る前から事故米を焼酎関連に転用していたことや、冬木社長から事故米の扱いについて相談を受け、転用を勧めたことを朝日新聞に認めている。一雄氏の息子で、転用があった時期の九州工場(福岡県筑前町)の所長だった雄三氏(現営業課長)も複数のメディアに対し、

「父から転用を社長に提案したのだと思う」などと述べている。今回の問題の鍵を握る宮崎親子。過去をさかのぼると、福岡県大刀洗町の「宮崎商店」に行きあたる。

◆源流は福岡の宮崎商店

信用調査会社などによると、一雄氏が宮崎商店を創業したのは1965年。九州や関西などの企業から米や麦など雑穀を仕入れ、九州の酒造会社や農協などに卸すのが主な業務内容で、一雄氏の弟ら親族が役員をつとめていた。延べ約370平方メートルの倉庫兼事務所と、大分に工場をもち、十数人ほどの従業員が働いていたという。

「倉庫はいつも閉まっていて、何を扱っているのかわからず、人の姿もあまり見なかった。十数年前は事故米という言葉さえ知らなかったが、もしかしたらすぐ近くで取り扱われていたのだろうか......」

付近の会社に勤める男性は、驚いた様子で話す。

宮崎商店と取引があった宮崎県の酒造会社はこう話す。

「20年近く前、米焼酎をたくさんつくっていた時期に小口の取引があった。事故米のことなんて、当時は考えもしなかった」

収益は低調ながら商売の基盤を確立していた。ところが、93年ごろ、手を出した輸入化粧品原料の販売に失敗。輸入海産物の卸売りで盛り返すものの、取引先の明太子業者が不渡りを出したことで約2億円が焦げ付き、97年には銀行取引の停止に追い込まれたという。

福岡と大阪。遠く離れた宮崎商店と三笠フーズが密接に結びついたのはこの時期だ。経営破綻した同商店を三笠フーズが買収。親子で同社に入ったことが、後の事故米の転用へとつながったようだ。

それにしても、宮崎商店が、事故米を食用として転売していたのは、いつからなのだろう。

今回、父親の一雄氏に確認しようとしたが、「うるさい、過ぎた話はしなさんな」と説明を拒否。過去の朝日新聞の取材に対しては、「事故米は何十年も前から発生している」と述べるなど、かなり以前から事故米を転用していたとも取れる発言をしている。

ちなみに、信用調査会社によると、一雄氏について記載された項目には、「温厚、誠実、明朗な相場師的要素をもち頭の回転が速い」とあった。

宮崎商店時代には、熊本県で牧場も経営していたというから、商才はそれなりにあったに違いない。その商才が悪用されたということなのだろうか。

◆事故米ロンダリング術

一雄氏は、三笠フーズに事故米の転用を提案しただけでなく、これまでの農林水産省などの調べで明らかになった、三笠フーズから出た非食用米が食用米に変わる過程でも、大きな役割を果たしていたようだ。

例えば、チャート右側の、メタミドホスで汚染された中国産もち米が和菓子に使われるまでの流れでは、三笠フーズはまず、マルモ商事に「非食用」として汚染米を販売。米は非食用のままサン商事に転売されたが、サン商事はそれを「食用」に変えて河商に販売。それ以降は食用のまま、菓子メーカーまで売られていた。

サン商事のところで突然、用途が変更されたわけだが、この会社の社長をつとめるのが一雄氏なのだ。会社の所在地は、一雄氏の自宅マンションと一致。事故米が食用にロンダリング(洗浄)される過程で、一雄氏のペーパーカンパニーがハブ的な役割を務めたのはどうやら疑いの余地がないようだ。

このときの売買で、サン商事から「米粉」などの名目で買い取った河商は、「事故米だとはまったく知らなかった。ただ、今回は販売先を指定してきたので、少しおかしいとは思っていた」と話す。

◆節穴だった農水省調査

こうみてくると、宮崎親子が中心的な人物だったことが浮かび上がってくるのだが、三笠フーズの冬木社長の責任も言うまでもなく重大だ。

冬木氏は、転用が自らの判断で進められたことを認めている。自公両党の調査団が18日に九州工場を訪れた際には雄三氏が、

「初めから、食用にするつもりで事故米を購入した」

「事故米の入札は社長がやっており、自分は1、2回しか立ち会ったことはない」

と冬木社長が指示だけでなく、転用の実務でも動いていたと説明したという。

さらに、そもそも三笠フーズが宮崎商店を買収したのは、同社が事故米の売買に関する資格やノウハウをもっていたことに目をつけ、もうけの大きい転用ビジネスへの「参入」を狙ったから、との見方もある。実際、今回の転用では、判明した分だけで1000万円超の利益を上げたとされる。

事故米が食用として流通するのを長期にわたって許した農水省の責任も大きい。

三笠フーズには同省が96回も立ち会い調査に入ったが、事前に調査日を知らせていたため、転用を見抜けなかった。調査を担当していた近畿農政局大阪農政事務所の課長(当時)が、三笠フーズの冬木社長らから飲食接待を受けていたことも判明した。

三笠フーズによる事故米の転用が明るみに出た後、浅井(名古屋市)、太田産業(愛知県小坂井町)、島田化学工業(新潟県長岡市)でも転用があったことが次々とわかった。このことは、問題が局所的なものではなく、構造的なものだということを示している。

また、宮崎商店でも転用があったとされることからは、私たちの食の安全が、いかに長い年月、脅かされ続けていたかがうかがえる。

今後、警察の捜査も含め、問題点の特定が進められる。悪徳業者はこれからもいなくなることはない。それを防ぐ手立てを整備するしかないだろう。

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