2008年10月05日

勝ち組襲う早すぎる挫折

「できる子」ばかりに囲まれて

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編集部 甲斐さやか ライター 柿崎明子、庄村敦子


◆勉強できず高2で退学

首都圏に住むフリーターのA子さん(19)は、「進学実績が急伸中」と評判の新興私立中高一貫校に在学中、ずっと劣等感に苛まれてきた。

勉強は予想以上に厳しかった。授業の進度は速く、毎週小テストがある。成績が悪ければ親が呼び出され、追試に次ぐ追試に追われた。親からは「勉強しろ」と言われたが、勉強の仕方すらわからなかった。

高校に上がっても成績は上がらず、進級すら危うい状況になり、高2で自主退学した。別の学校に転校したものの、自分が何を勉強したいのかわからなかった。母親に勧められるまま、私立女子大にAO入試で入学したが、「授業がイマイチ」と感じて、1年もたたずに退学してしまった。

◆成績低いほど自己否定

大都市圏では、私立中受験ブームが過熱する一方だ。高校受験のない6年一貫教育で、大学受験にも有利。先生も熱心で、公立のような「荒れ」やいじめも少ない----そんな薔薇色の未来を夢見て、親は小学生の我が子を進学塾に通わせる。だが、できる子ばかりが集まる私立中に進学してしまったために自信を喪失し、結果的に「回り道」をしてしまう例も少なくない。

首都大学東京の西島央准教授(教育社会学)は、数年前、都内の私立中2年生を対象に行った「自己肯定感」に関する調査結果を見て、衝撃を受けた。中学校の入試難易度の高低にかかわらず、校内成績の低い層では、「自分には人よりすぐれたところがあるか」「自分に自信があるか」を問う質問に対し、否定的に答える傾向が明らかだったからだ。

◆挫折感解消に長い年月

親が良かれと思って我が子に中学受験をさせたのに、その後の人生に長く悪影響を及ぼす「挫折体験」が生まれてしまうのは皮肉だ。それを乗り越えるには、長い時間がかかることも少なくない。

北海道出身のC子さん(37)は、国立大付属中に進学後、自分が1番じゃないことに愕然としたという。

「『私はどうせ何をやってもダメだ』という考え方は、その後、大人になっても、ずっと拭いきれませんでした。」

しかし、ようやく最近になって、「1番じゃない自分」を受け入れられるようになったという。数年前、不登校や保健室登校の中学生と接する機会を得たからだ。

「どうせ自分なんかダメだ」

と、彼らは口々に言う。しかし、その話をじっくりと聞き、

「絵が上手なんだね」

「そういうところがやさしいのね」

と、長所を指摘してあげると、少しずつ表情が明るくなり、次第に心を開いてくれるようになった。

教師になりたい。そのためにこの秋から、大学の教育学部に入学するつもりだ。

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