2008年10月10日

破綻しても自分は大丈夫

ロスジェネ外資系社員

編集部 常井健一


◆「勝ち組」に"強気"は健在

やっと取れた夏休みでインドのヨガの聖地を訪ねた。

あと2日で帰国という朝、幽玄な朝もやの風景とは対照的な激しいノック音が響いた。

「ねえ、バンクラプトだって」

飛び込んできた友人に促され、枕元のブラックベリーを見た。リーマン・ブラザーズで働くユリコさん(30代)はこうして破綻を知った。

成田空港に到着して、私用の携帯に電源を入れた途端、48件の新着メールが飛び込んできた。励ましのメールの中に、転職先を紹介する内容もあった。悪い話ではない。焦ることなんて、ないじゃない。

記者会見でリーマン日本法人の桂木明夫社長は、淡々と破綻の理由を「分析」していた。

「外的要因が大きいことは誰もが認めるところだ」

山一ショックのとき、敗軍の将がカメラの前で泣きじゃくったのとは対照的だった。

◆日系になれば未練なし

9月30日。会社から全社員に向けて英文メールが送られてきた。救済を申し入れた野村證券入りへの意思確認だった。タイゾウさん(20代)はとりあえず「同意」をクリックした。

破綻前は9時出社、日付が変わる前に帰ることはなかった。寝る気にならないぐらい、責任も刺激もある仕事だった。

それが今は「9時5時」。仕事がない。椅子を集めて、ダベる毎日。夜食代2400円も帰りのタクシー代も、もらえる口実はいまはない。節約を考え、地下鉄を使い始めた。

都内の有名大学を卒業し、一番早く内定をくれたリーマンを選んだ。会社は「ライブドア」騒動で有名になっていた。1年目で年収は2000万円弱。ヒルズから徒歩10分圏内に転居した。大きなディールが成立すると綺麗な女子を囲み、入手困難の高級ワインに酔いしれた。

「イイ、オポチュニティガ、アリマス」

破綻の一報から、外国人ヘッドハンターからの電話が殺到した。欧米系金融からのスカウトに交じり、フィリピンからの誘いもあった。元上司から料亭に呼び出されることもある。

でも、パソコン画面でチェックするのはもっぱら米国MBA関連のホームページ。いまなら出願期限に間に合う。

「帰国しても三十路ですから。いまのうちに人脈作りを、と」

実績を生かせるのは留学か転職か。いずれにせよ、日系になった自社に未練は微塵もない。

バックナンバー

アエラ最新号

2012年2月13日号

2012年2月13日号

最新号キーワード

食の信念が揺らぐ 銀行窓販保険の魅力と危険 早慶女子「一般職がいい」 女心の複雑 「脱東電」で電気代26%節約 「驚異の儲け」グリーよ どこへ行く 絢香インタビュー 荻原博子の石巻ルポ 今年の花粉症 AKB48「恋愛で脱退」のルールと戦略 

2012年2月13日号
定価:380円(税込)
表紙:松田翔太/俳優

雑誌を購入

デジタル雑誌を購入

から検索
から検索