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歴史とたたかう結婚
40代婚のフジテレビプロデューサーが小説で問う
編集部 伊東武彦◆栗原美和子と村崎太郎の結婚
2007年11月発行のアエラに、小さなインタビュー記事が載った。タイトルは、「『僕が幸せになるにはあなたが必要』のひと言で決めた」40代の結婚について明るく語っているのは、その4カ月前に結婚したフジテレビのプロデューサー栗原美和子と、猿まわし師の村崎太郎だ。華やかなテレビの世界で話題作を連発してきた当時42歳の敏腕プロデューサーと、地味な伝統芸能の世界にいる46歳男性の取り合わせ。そのギャップが話題になった。
◆他人に吐き出せない重い物を抱えた2人
1年後の今、『太郎が恋をする頃までには...』(幻冬舎刊)という小説が発売された。著者は栗原美和子だ。内容はフィクションだが、そこには美和子と太郎が乗り越えようとしている現実が、色濃く投影されている。この小説が生まれたきっかけは、07年11月17日に行われた2人の披露宴だった。華やかな席で、列席者の一人だった幻冬舎社長・見城徹は普通の結婚にはない痛切さを感じ取った。
----この2人は、他人には吐き出せない重いものを抱えているのではないか。
1カ月後の12月、美和子は見城から私小説を書いてほしいと依頼される。
◆俺の家族の歴史を聞いてくれないか
太郎は被差別部落出身だった。
美和子と太郎は、06年11月に知り合った。出会いは太郎の半生を扱ったテレビドラマの打ち合わせの席。先に熱心にアプローチしたのは太郎だった。毎日電話が来た。最初は面食らったが、太郎のどこか哀しげな目と、その奥にある強さに惹かれていく。
そんなある日、美和子は太郎から告げられた。
----俺の家族の歴史を聞いてくれないか----
話は夜更けまで続いた。長い話を聞き終わった時、美和子は彼の目の奥にある哀しみに触れた気がした。心が震えた。「長い歴史を背負った運命的な生まれ方をして、伝統のある職業に就いて、真実を自分の中に秘めて闘っている。私の中の激しさを共有して生きてくれる相手がようやく現れたんだって」
◆ドラマを超える物語の幕が開いた
太郎から生い立ちを聞かされた美和子は「きた」と思った。自分で作ってきたドラマを超える物語の幕が開いたのだ、と。結婚を決めた。
決意した後も葛藤があった。自分の夫はすごい生き方をしている男性なのだと話したい。でも、やはり周囲に受け入れられないかもしれない。家族は、そして誰よりも両親はどう思うだろうか。そこに来た私小説の依頼だった。見城に会った後、美和子は太郎に自分の気持ちを素直に話した。早くても20年後だと思っていた。まだ早いかもしれない。でも今、書く方向に流れが来ている気がする。それに逆らわないで書いてみたいんだ、と。
「そうかもしれない」太郎はうなずいた。
夫婦の闘いが始まった----。
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