2009年01月18日

売れない時代に売る情熱と戦略ー伊勢丹で働く女たち

多数派だからこそ人より努力を

編集部 木村恵子


◆「折れない情熱」で

ド派手なピンクのバスローブ、胸に大きなハートがあるルームウェア、デコラティブなランジェリー......。女子が感じるカワイイをギュッと凝縮したようなフロアが、昨年9月、新宿本館地下2階にオープンした。その名も「イセタンガール」。

フロアでも特に、他者目線を完全排除した女子の美意識が炸裂する「プライベートタイム」コーナーの品ぞろえを担当するのが、バイヤーの長坂貴子さん(31)だ。

潜在的な顧客のニーズをどう掴むか。入社後、ミセスフロアの販売担当をしていた2年間に学んだ。売れるものは数字を見ればわかる。大事なのは、「なぜ売れなかったか」だ。

バイヤーとなった今でもできるだけ店頭に立ち、販売員からも話を聞く。

「大事なのは『折れない情熱』。これを届けたい、これなら買ってもらえると思える商品を探すために、自分の感覚をフル活用してます」

有名ブランドを並べれば、自動的に売れる「古き良き時代」ではない。では何だったら売れる? 社内の会議では、

「その商品では通用しません」

否定は簡単に出てくるけれど、代替案が示せない。それが何よりも辛いという。上司には、

「『頭から血が出るくらい考えろ』と言われます」

◆個に対するアプローチ

バブル崩壊後から続く百貨店の冬の時代で、業界として奇跡的成功と言われているのが伊勢丹メンズ館だ。

改装オープンした2003年当時、百貨店業界では紳士の売れ行きは厳しく、縮小傾向が続いていた。だが、あえて社を挙げたプロジェクトとして投資した。その一員に指名されたのが、田代直子さん(41)だった。

「女性から見て、男性だってこうしたら楽しいだろうという感覚が生きました」

オープン後はバイヤーとして、年4回イタリアやロンドンで最先端の商品を買い付けた。日本に入っていないブランドを開拓し、日本人用のサイズに作り直すよう交渉。1回の出張での買い付け額は2千万円。

コンスタントに売り上げを伸ばしていたメンズ館もいま、厳しさは他の売り場と同じだ。田代さんは現在、メンズ館レジデンスフロアのセールスマネージャーとして、販売計画や売り上げ管理などを担当。朝礼で、スタッフに声をかける。

「個に対するアプローチを大事にして」

販売員が個人的な関係を築き、この人からまた買いたいというファンを作り、繰り返し足を運んでもらう。

売り上げは原点だ。でも、それは一人のカリスマバイヤーやカリスマ販売員が生むものではない。売り場以外の「見えない」職場で働く多くの人たちが、百貨店ビジネスを支えていたーー。

バックナンバー

アエラ最新号

2012年2月13日号

2012年2月13日号

最新号キーワード

食の信念が揺らぐ 銀行窓販保険の魅力と危険 早慶女子「一般職がいい」 女心の複雑 「脱東電」で電気代26%節約 「驚異の儲け」グリーよ どこへ行く 絢香インタビュー 荻原博子の石巻ルポ 今年の花粉症 AKB48「恋愛で脱退」のルールと戦略 

2012年2月13日号
定価:380円(税込)
表紙:松田翔太/俳優

雑誌を購入

デジタル雑誌を購入

から検索
から検索