2009年12月18日

過激でリアルな「ウソの世界」

「異端の演出家」カステルッチ本格来日

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ライター 岩城京子


◆こんなステージ、見たことがない

グランドピアノがめらめらと燃え、血みどろの床が黒光りしている。人骨や人肉を用いて採録された不気味な破壊音が耳に響く。あげくの果てには本物の猛犬3匹が舞台上に放たれ、演出家が襲われる──。

「こんなステージ、俺は見たことがない」

世界最先鋭の現代演劇を上演するロンドンのバービカン・センターの客席で、隣の男性があっけにとられつぶやいた。

イタリア人演出家ロメオ・カステルッチは現在、欧州の演劇界で「異端の帝王」と呼ばれる。彼の舞台は、過激で過剰。そもそも、舞台は全て大きなウソだが、彼は誰よりもリアルで鬼気迫るウソの世界を創造する。

「わたしはこの世とは別の現実を完成させたい」

彼は温和な口調で、ものすごいことを口にする。つまり彼は創造主として、舞台上にこの世とは別の世界を生み出したいというのだ。

「たまに全体像のイメージがパッとひらめくことがあるんです。その絵がひらめいたら、その後はそれを形にするだけ。1週間とかかりません。もちろん、それを現実化するために膨大な勉強は必要になりますけど」

欧州の演劇事情に詳しい早稲田大学文学学術院の藤井慎太郎准教授は、カステルッチの舞台を次のように評価する。

「彼は偉大なる完全主義者。完璧な秩序をもった別世界を構築し、観客を圧倒しながら、観客に居場所を残した作品を創る」

さて、この狂気の創造主はどのように誕生したのだろうか。子どものころから見事なデッサンや詩作を続ける早熟な天才だったのか。実は違う。

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