2010年02月21日

正社員化で「新しい陰湿」

デフレ不況下の「職場のいじめ」

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編集部 四本倫子 井上和典 写真 篠塚ようこ 立体イラスト kucci


「正社員採用35人募集」

これが発表されてから、オフィスの空気は一変した──。

IT関連企業のコールセンターに派遣社員として勤務する女性(28)は、殺伐とした社内をそう感じたという。

働き始めて3年目。経験年数ではもっと上の派遣社員も多い。しかし、派遣の同僚たちから、「応募すれば、きっと正社員になれるって」と背中を押されたこともあり、応募に踏み切った。採用倍率は5倍弱。応募者の氏名が明かされることはなかったが、瞬く間に噂は広がる。

応募して間もなく、重要な業務内容の一つ、クレーム処理の共有化などでミスを頻発した。処理に必要な情報の一部が届かなくなったのだ。

数日後、社内の友人から、

「正社員採用で、あなたを落とそうとしてる人がいる」

と聞かされる。誰が関係しているのかを尋ねると、友人は、それまで彼女が仲良くしていた「同僚」の名前を耳打ちした。その同僚も、正社員に応募していた。

「被害者」は自分だけではない。応募した他の派遣社員と正社員の上司との、根も葉もない恋愛話なども飛び交うようになった。

「噂や嫌がらせが続くうちに、いつしか、私も加担する側に立っていました。最悪な・イス取りゲーム・でした」

民主党政権は、非正規社員の正社員化にも前政権以上に本腰を入れて動き始めた。一方で、個人加盟できる労組組織、東京管理職ユニオンによると、2000年から減少していた「退職勧奨」の相談件数が、ここ数年は再び増えている。

外資系企業で働く30代の女性は、嫌な予感が的中した。

3年前、派遣から正社員に登用されたが、間もなく勤務先は人件費を2年間で70%削減するという方針をまとめた。

そのうち直属の上司が、自分のことについて、「私は正社員化に反対した」と、話していたという噂を耳にした。この直属の上司はその後も、「ファイルの仕方が悪い」「ホチキスの止め方が悪い」と、仕事"以前"の問題を執拗に指摘する。派遣社員時代はそんなことで注意されることはなかったのに、「嫌がらせ」だろうか......。

同僚のなかにも、正社員としての試用期間満了と同時に解雇されたケースがあった。

その後、自分も言われた。

「仕事についていけないんだったら、辞めれば?」

実質的な「退職勧奨」だった。上司の態度に耐えられず、登用から1年で辞表を書いた。
 
非正規から正規へ。登用の可能性は開けたとはいえ、誰もがかなうわけではない。それが、新たな「陰湿行為」も生むーー。

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