オバマ大統領就任現地ルポ

2009年01月20日

1月18日(日) 午後 ワシントン・連邦議会議事堂

20080118PM_1.jpg
臨時トイレとThe Capitol


ジャーナリスト 津山恵子


伝統あるラッセル上院議員ビルを出て、最初に目に飛び込んだのが、ずらりと並んだ臨時トイレ。

就任式が開かれるThe Capitolと呼ばれる連邦議会議事堂の真横に設置されている。オバマの宣誓を間近に見られる人が使うエントランスの側だ。ということは、この臨時トイレで用をたすのは、賓客中の賓客ということになる。

最大200万人が就任式を「目撃」しに集まる、と言われている。が、この臨時トイレほど、ワシントンの清潔でクラシックな建築物群に似合わないものはない。

数万人から10万人が集まるオバマの選挙集会で何度も目にしてきたが、就任式会場近くに散在する臨時トイレの数は、私がこれまでの人生で目にした数で最大だ。

青や緑の臨時トイレを見ながら、この数日間は、人生で初めて、という経験が相次ぐのだろう、と思った。

巨大な建物と臨時トイレ前をぐるっと回って、就任式が開かれる議事堂のテラス部分をチェックした。

20080118PM_2.jpg
就任宣誓の場所。ビニールのかかったカーテンの前にある丸いバルコニーがその場所になるはずだ

テラスの右には、世界の主要メディアがカメラを据えるひな壇が設けられ、テラスの下には賓客のための折りたたみ椅子がずらり。その後方に現在は自由に入れる場所があり、観光客が就任式会場を前に記念写真を撮っている。

会場では音声リハーサル中。

20080118PM_3.jpg
就任式会場のリハーサル風景

「Ladies and Gentlemen, 41st President of the United States, George Herbert Walker Bush
パパブッシュが会場に呼びこまれたところだ。

記念撮影をしている人たちに話しかけて歩いた。すると・・・

上院議員ビルを出て1時間あまりしか経過していないのに、足の感覚がなくなった。 爪先だけでなく、足首あたりまで凍ったみたいで、ペンギンみたいにひょこひょこと歩いているみじめな自分を発見した・・・。

iPhoneで気温をチェック。零下1度。ニューヨークよりは暖かいはずだ、と思ったのだが、靴下2枚にカナダ製の防寒ブーツでは甘かった!

就任式当日の最低気温は零下9度となっている。

当日は、会場付近は全面閉鎖されるため、なるべく近くまで公共交通機関で行って、会場入り口まで相当歩くことになる。

入り口での集合時間が朝8時で、式の開始が午前11時半だ。

それに至るまで数時間、今よりも低い気温の中、立ち続けなくてはならない・・・。


そういえば、The Capitol前で、向かって右手で大きなテレビカメラを構えているカメラマンが

「寒いぞ、くそっ」

と言った声がこだましていた。

ライフルを持った警察官が

「おい、ちょっと、なんだって」

と、カメラマンの汚い言葉をたしなめていた。


私は、自分では取材の準備は周到なほうだと思っていた。ここまで来て、金曜日の買い物で最も気がきいていたのは、零下でもメモが取れるシャーペンだけ、ということに気がついた。

寒さという強敵への備えは、赤ん坊のようなものだった。

歴史的瞬間の目撃が、人生で初めての、最も凍りつく取材になるのは間違いない。


この日18日は、午後2時半から、リンカーンの巨大な像が座っているリンカーン・メモリアルで、就任式イベントの最初となるコンサートが開かれた。ボノ、ブルース・スプリングスティーン、スティービー・ワンダー、ビヨンセと、豪華スターのオンパレードだ。

20080118PM_4.jpg
コンサートで。寒くてもうれしそうな人たち

何十万人もの人が毛布を抱え、警察官に持ち物検査をされてから、会場に向かう。

ここは、映画フォレスト・ガンプで、フォレストがベトナム戦争から帰還して、幼馴なじみ、ジェニーと再会した場所だ。ジェニーがフォレストの名を叫びながら飛び込んだ感動のシーンの巨大な長い池は凍っていた!カモメが恰好悪く氷上を歩いている。

コンサートで見た人々の様子は、選挙集会のときとまったく違っていた。

選挙では、

「オバマが当選しなければ、自分たちの生活にチェンジは訪れない」

という、不安と期待感と、必死さが渦巻いていた。多くの人が、生活を犠牲にしてボランティアをしたり、支持者を増やそうと口コミを広げていた。


今日は違う。

とてもリラックスして、わけもなくうれしそうだ。

こんなに寒いのに、どうしてここにいるのか、と思うようなお年寄りもいる。

彼らは、並みいるスター歌手を見に来たのでなく、オバマを見に来ている。

コンサートを待つ間も、テレビ局が用意した有名人のメッセージのビデオが、大型スクリーンで流されたが、誰もほとんど見向きもされなかった。

それなのに、オバマの選挙ビデオが流れるだけで、毛布にくるまり座っていた人たちが、わっと立ち上がって、とび跳ねたり、アメリカ国旗を振った。

これが、オバマが当選後に、シカゴの勝利集会で言った「われわれの勝利」なのだろう。
朝日新聞出版から新刊、「オバマの真実」が発売されました。

前後の記事はこちらから↓↓↓↓(バックナンバーをご覧ください)

inauguration , obama , president , アメリカ , オバマ , 大統領 , 就任 , 津山恵子 , 現地ルポ

バックナンバー

アエラ最新号

2012年2月13日号

2012年2月13日号

最新号キーワード

食の信念が揺らぐ 銀行窓販保険の魅力と危険 早慶女子「一般職がいい」 女心の複雑 「脱東電」で電気代26%節約 「驚異の儲け」グリーよ どこへ行く 絢香インタビュー 荻原博子の石巻ルポ 今年の花粉症 AKB48「恋愛で脱退」のルールと戦略 

2012年2月13日号
定価:380円(税込)
表紙:松田翔太/俳優

雑誌を購入

デジタル雑誌を購入

から検索
から検索