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『告白』映画化に携わって
『告白』という小説の存在を初めて知ったのは、一昨年の春先だったかと思います。
新人作家が書いた、とてつもなく面白い作品がある。今年の夏は、この作品を重点的に売り出す。ついては、映像化に関しても早めに動いて欲しい。
会社の仕事として、そういう指示を受けたのです。
その作品というのが、『告白』でした。
僕が勤めているのは双葉社という出版社です。今の部署はライツ事業部。双葉社が出版している作品の二次使用、映像化や商品化、海外翻訳出版などを担当している部署です。
原作者の代理人として、『告白』の映像化に関して窓口となるのが僕の仕事というわけです。
中学校の女性教師が、自分のクラスの生徒達に「この中に私の娘を殺した犯人がいる」--------。このショッキングな告白から物語が始まると聞いたとき、最初は読むのに抵抗がありました。思春期の子供を持つ親として、日々心乱れる思いをしている身としては、ちょっと生々しすぎるんじゃないかという気がしたのです。
ですが、読み始めるとその懸念は消え去りました。
確かに、出て来る人間は全て自己中心的です。ですが、作者と彼らの間には距離がある。悲惨な物語なのですが、語り口には乾いたユーモアさえ感じることがある。
早い話が、小説として面白かったのです。
作者の湊かなえさんはこれがデビュー作だったのですが、新人とは思えないリーダビリティがあるのに驚かされました。
作品の力に加えて営業部の努力が実を結び、発売直後から売れ行きもよく、映像化のオファーも続々と来ました。
ただ、この作品の映像化はかなりハードルが高いだろうなとも思っていました。
すべて一人称で、章が変わる毎に語り手が変わる。別の人間の告白になることで、ひとつの出来事に別の意味が見えてくる。小説としてはとても面白い技法です。ただ、映像化するのはなかなか難しい。映像だと、一人の主人公をおいて、彼に沿って物語が進む形式の方が、圧倒的に分かりやすいのです。
それに加えて、未成年犯罪やエイズなど、なかなかデリケートな問題も、ドラマに不可欠な要素として組み込まれている。
小説を読めば、それがただ興味本位で使われているわけではないことはわかるのですが、へたな人間が映像化すると、そのセンセーショナルな部分だけがクローズアップされるかもしれない。
そうなったら原作すらも誤解されかねない。
とにかく、『告白』の映像化の成功は、誰が監督をするかにかかっている。そう思っていました。
知り合いのプロデューサーから「中島哲也監督が『告白』を映画化したいと希望している」と電話がかかってきた時の驚きというか、喜びというか、視界が一気に開けた感覚は、今でもはっきりと覚えています。
「その手があったか!」
思わず心の中で叫びました。
中島監督の実力はよく分かっていました。彼は、劇団☆新感線の座長いのうえひでのりの小学校時代からの友人でもあり、以前から面識はあったのです。
ただ、彼のそれまでのCGを多用するポップな作風からは、『告白』は全然想像できなかった。
でも、改めてふりかえると、作中の時間経過を前後させたりする多面的な語り口と緻密な構成力は、『告白』の映画化には不可欠なもの。絵作りには定評がある上に「今回はCGなどは抑えてドラマをじっくり撮りたいと言っている」というプロデューサーの弁も心強い。
しかも製作は東宝でいけそうだという。邦画で当てようと思うなら、一番心強い会社です。
ただこの異色作が東宝というカラーに合うかという懸念はあったのですが、中島監督作品ならばなんとかなるんじゃないか。そう期待して、中島哲也監督で行きたいと提案しました。社内も、原作者である湊さんの合意もとれて、正式に『告白』の映画化がスタートしたのです。
初めてオールラッシュを観たとき、僕も含めて、製作委員会の関係者全員声を失っていました。
「すごい・・・」とにかく、その言葉しか出てこなかった。
久しぶりに邦画で、映画の塊のような作品が生まれようとしている。
なんだか知らないが、とにかく1時間46分、瞬きする暇もないほど画面を食い入るように観てしまう。そんな感覚でした。
キャストもいい。特に、松たか子さんは素晴らしい。
間違いなく傑作になる。
ただ、この作品をどう売っていくか。お客さんに、この作品の面白さをどういう風に伝えたらいいか。それはとても難しいのではないか。そうも思いました。
それは他の製作委員会のみなさんも感じていたようです。
こういう題材の小説なので、テレビ局がついているわけではない。
とにかく自分達が頑張って宣伝していこう。東宝宣伝部を中心に、映画の宣伝キャンペーンは始まりました。
その甲斐あってか、初日の蓋を開けてみたら、大ヒット。その週末の興行収入第一位をとるほどでした。
お客さんにも、ちゃんと伝わっていたのです。
確かに映画化が決まってから、原作本も飛躍的に売れていました。4月に出した文庫も一ヶ月も経たないうちに100万部を超え、単行本も合わせれば210万部を超える大ベストセラーになっています。
『告白』という作品は、もはや"現象"になったんだなと思います。
賛否両論あってしかるべき作品だと思います。
でも、この原作をよくこういう映画にした。さすがは中島哲也監督です。
個人的には、ポン・ジュノの『殺人の追憶』なんかにも負けない映画になっていると思っています。
ささやかではありますが、この映画が生まれることに関われたこと、監督と原作の橋渡しができたことを光栄に思います。
映画『告白』、是非ご覧になって下さい。
好き嫌いはあるとは思いますが、この映画、傑作です。
新人作家が書いた、とてつもなく面白い作品がある。今年の夏は、この作品を重点的に売り出す。ついては、映像化に関しても早めに動いて欲しい。
会社の仕事として、そういう指示を受けたのです。
その作品というのが、『告白』でした。
僕が勤めているのは双葉社という出版社です。今の部署はライツ事業部。双葉社が出版している作品の二次使用、映像化や商品化、海外翻訳出版などを担当している部署です。
原作者の代理人として、『告白』の映像化に関して窓口となるのが僕の仕事というわけです。
中学校の女性教師が、自分のクラスの生徒達に「この中に私の娘を殺した犯人がいる」--------。このショッキングな告白から物語が始まると聞いたとき、最初は読むのに抵抗がありました。思春期の子供を持つ親として、日々心乱れる思いをしている身としては、ちょっと生々しすぎるんじゃないかという気がしたのです。
ですが、読み始めるとその懸念は消え去りました。
確かに、出て来る人間は全て自己中心的です。ですが、作者と彼らの間には距離がある。悲惨な物語なのですが、語り口には乾いたユーモアさえ感じることがある。
早い話が、小説として面白かったのです。
作者の湊かなえさんはこれがデビュー作だったのですが、新人とは思えないリーダビリティがあるのに驚かされました。
作品の力に加えて営業部の努力が実を結び、発売直後から売れ行きもよく、映像化のオファーも続々と来ました。
ただ、この作品の映像化はかなりハードルが高いだろうなとも思っていました。
すべて一人称で、章が変わる毎に語り手が変わる。別の人間の告白になることで、ひとつの出来事に別の意味が見えてくる。小説としてはとても面白い技法です。ただ、映像化するのはなかなか難しい。映像だと、一人の主人公をおいて、彼に沿って物語が進む形式の方が、圧倒的に分かりやすいのです。
それに加えて、未成年犯罪やエイズなど、なかなかデリケートな問題も、ドラマに不可欠な要素として組み込まれている。
小説を読めば、それがただ興味本位で使われているわけではないことはわかるのですが、へたな人間が映像化すると、そのセンセーショナルな部分だけがクローズアップされるかもしれない。
そうなったら原作すらも誤解されかねない。
とにかく、『告白』の映像化の成功は、誰が監督をするかにかかっている。そう思っていました。
知り合いのプロデューサーから「中島哲也監督が『告白』を映画化したいと希望している」と電話がかかってきた時の驚きというか、喜びというか、視界が一気に開けた感覚は、今でもはっきりと覚えています。
「その手があったか!」
思わず心の中で叫びました。
中島監督の実力はよく分かっていました。彼は、劇団☆新感線の座長いのうえひでのりの小学校時代からの友人でもあり、以前から面識はあったのです。
ただ、彼のそれまでのCGを多用するポップな作風からは、『告白』は全然想像できなかった。
でも、改めてふりかえると、作中の時間経過を前後させたりする多面的な語り口と緻密な構成力は、『告白』の映画化には不可欠なもの。絵作りには定評がある上に「今回はCGなどは抑えてドラマをじっくり撮りたいと言っている」というプロデューサーの弁も心強い。
しかも製作は東宝でいけそうだという。邦画で当てようと思うなら、一番心強い会社です。
ただこの異色作が東宝というカラーに合うかという懸念はあったのですが、中島監督作品ならばなんとかなるんじゃないか。そう期待して、中島哲也監督で行きたいと提案しました。社内も、原作者である湊さんの合意もとれて、正式に『告白』の映画化がスタートしたのです。
初めてオールラッシュを観たとき、僕も含めて、製作委員会の関係者全員声を失っていました。
「すごい・・・」とにかく、その言葉しか出てこなかった。
久しぶりに邦画で、映画の塊のような作品が生まれようとしている。
なんだか知らないが、とにかく1時間46分、瞬きする暇もないほど画面を食い入るように観てしまう。そんな感覚でした。
キャストもいい。特に、松たか子さんは素晴らしい。
間違いなく傑作になる。
ただ、この作品をどう売っていくか。お客さんに、この作品の面白さをどういう風に伝えたらいいか。それはとても難しいのではないか。そうも思いました。
それは他の製作委員会のみなさんも感じていたようです。
こういう題材の小説なので、テレビ局がついているわけではない。
とにかく自分達が頑張って宣伝していこう。東宝宣伝部を中心に、映画の宣伝キャンペーンは始まりました。
その甲斐あってか、初日の蓋を開けてみたら、大ヒット。その週末の興行収入第一位をとるほどでした。
お客さんにも、ちゃんと伝わっていたのです。
確かに映画化が決まってから、原作本も飛躍的に売れていました。4月に出した文庫も一ヶ月も経たないうちに100万部を超え、単行本も合わせれば210万部を超える大ベストセラーになっています。
『告白』という作品は、もはや"現象"になったんだなと思います。
賛否両論あってしかるべき作品だと思います。
でも、この原作をよくこういう映画にした。さすがは中島哲也監督です。
個人的には、ポン・ジュノの『殺人の追憶』なんかにも負けない映画になっていると思っています。
ささやかではありますが、この映画が生まれることに関われたこと、監督と原作の橋渡しができたことを光栄に思います。
映画『告白』、是非ご覧になって下さい。
好き嫌いはあるとは思いますが、この映画、傑作です。

2012/02/10 05:46:22
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2012/02/07 05:39:35
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2012/01/29 10:05:02
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2012/01/23 10:20:44
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2012/01/22 14:19:12
16、「年賀状」考
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