特ダネ記者魂

2009年08月11日

粛々たる茶番劇/素人裁判員はお飾り/決定は「密室の評議」

[山田厚史の特ダネ記者魂]


とうとう裁判員制度が始まった。素人が裁判に加わって人を裁く。最初の判決は「懲役15年」。6人の裁判員はどんな思いで刑を言い渡したのだろうか。

「空気を読む」が当たり前とされる社会だ。他の人が何を考えているか探りながら、場にふさわしい発言をするのが良しとされる。多くの日本人は自分の意見を言うことに慣れていない。「分からないことがあったら質問しなさい」と言われても、口をつぐむ。メディアの記者会見だって質問する記者は限られている。素人が法廷という場違いな所に呼ばれ、裁判員として質問し、刑を決めるなど想像を絶する話である。

3日目になって全員が質問した。「裁判員一転、次々に質問」などと見出しが新聞に躍った。邪推かもしれないが、裁判官から質問を促されたのではないか。普段なら裁判長が聞くような問いを裁判員が順番にしていた。

法廷では頻繁に「評議」がもたれた。そろって退廷し別室で裁判の運営を協議する。試合途中に監督が選手を呼び集め指示を出し気合を入れる、あれに似たミーティングだ。

「どうですか、こんな質問はいかがでしょう」という誘いが裁判長からあってもおかしくはない。評議はプロの裁判官が素人裁判員に「振り付け」する場とも言われる。

素人でも経験を積めば人を裁く覚悟は出来るかもしれない。しかし、一生に一度あるかないか、という裁判員なら、敢えて我を張らず専門家にお任せするしかない、と多くの人は考えるだろう。

市民参加を装いながら法廷はいわば儀式、実質的な場は裁判長が仕切る評議。だがこの制度の致命的な欠陥は「問題を表面化させないシステム」であることだ。

裁判員は死ぬまで「守秘義務」がある。評議などで何が話し合われたか明らかにすると6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金だ。運営に不満があったり、改善が必要と思っても公の場で問題提起できない。多額の税金と手間を費やし、誰のための制度なのか。市民から「参加させて」と声があがって始まったものでもない。

メディアは法廷を、実況中継さながら細々と伝えた。しかしそれらは制度の「表の顔」でしかない。

山田厚史 , 裁判員制度

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