特ダネ記者魂

2009年09月01日

自衛隊の幹部に幅広い軍事的教養つける制度を

[田岡俊次の特ダネ記者魂]

「政権交代で安全保障政策がどうなる」ということで、勉強会やテレビ番組に呼ばれることが少なくないが、同席する自衛隊の退役将官たちの軍事常識の不足に唖然とすることが多い。北朝鮮の核ミサイルに対抗して、敵基地攻撃能力が必要、という人に「山岳地帯のトンネル陣地に潜む相手のミサイルをどうして発見するのか」と聞いても答えられない。「偵察衛星は1日1回程度、時速2万8千キロ以上で各地上空を通過する。常時監視はできませんよ」と言うと狼狽えて黙り込む。

日本が攻撃すれば、相手は核付き5、6基を含む推定200基以上の弾道ミサイルで反撃してくるから、先制攻撃をやるなら同時にすべてを潰す必要があるが、攻撃を言う人は反撃を受ける危険を計算に入れていない。自衛隊は標的しか撃ったことがなく、標的は応戦しないから、反撃されることを忘れるのだろう。「先制攻撃ではなく、反撃能力を持って抑止力にする」と、少しまともなことを言う将官もいるが、巡航ミサイル「トマホーク」の450キログラムの火薬弾頭では平均数人が死ぬ程度だ。初歩的な核弾頭でも都心に落ちれば100万人規模の死傷者がでるから、釣り合わず、とても抑止力にはならない。

自衛隊幹部は、自分が勤務した部隊、使った装備に関しては熟知し、錬度は高いが、持っていない核や弾道ミサイル、直接運用していない衛星に関する知識は、ごく一部の人を除けばシロウト同然だ。海外の軍事情勢については冷戦的発想から脱却できず、軍事史に詳しい人も今では防衛官僚に多い印象だ。ごく狭い分野の知識経験しかない人を、政治家もメディアも「軍事専門家」と思って、軍事問題すべてについて見解を求め、本人たちもそのつもりになりがちだ。外科医に各国のインフルエンザ対策をたずねるような形になる。従来、自衛隊は幹部をあまりにも「職人」として育てすぎたかもしれない。彼らの声に耳を傾けるべき局面もありうることを考えれば、高級将校が国際情勢や歴史など幅広い軍事的教養をつける制度が重要だ。

田岡俊次 , 自衛隊 , 軍事

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