特ダネ記者魂

2009年12月02日

アフガンは潮時だ/オバマは米国のゴルバチョフ

[山田厚史の特ダネ記者魂]

ベルリンの壁が崩れて20年経った。あの頃世界を背負ったのは、体制転換という「城明け渡し」を無血で成し遂げたゴルバチョフだった。今、その役回りに立つのはオバマ大統領。黒いゴルバチョフである。

アフガニスタンでの新戦略が近く発表される。撤退を視野に、戦力増強を打ち出すのだろう。だがオバマは増派で治安が回復すると考えてはいないと思う。それでも兵力を投入するところに、オバマの悩みがある。個人としての思いと大統領として出来ることの隔たりに苦悩している。

「普天間」では鳩山首相が右往左往している。鳩山個人は、沖縄から米軍に退去してもらいたいと思っている。しかし首相鳩山にその選択肢はない。日米体制は個人の思いを超えた重い現実に縛られている。日本が駐留経費を負担してくれる沖縄は大統領として居心地がいいが、オバマ個人はどう考えているだろう。案外、オバマ・鳩山は弱者に対する共感で重なる部分があるかもしれない。その個人の思いを政治に実現するか、ゴルバチョフのようなしたたかさが必要だ。

米ソが軍拡を競った1980年代、ソ連は軍事予算の重圧で、経済が壊れた。消費財は不足し、汚職が蔓延し、人心は離れ、自己崩壊した。米国も苦しかった。財政赤字は膨れたが、日本が言われるまま米国債を買い、総力戦を支えた。実は、勝者は別にいた。軍事予算で肥大化した軍産複合体とマネーを世界からかき集める金融資本である。冷戦後この二つの勢力が世界を仕切った。だが驕れる者は久しからず。イラク・アフガンでの失敗とリーマンショックがやって来た。冷戦瓦解の第二幕が20年遅れて始まる。

人々がオバマに託した新しいアメリカは、栄光の挫折とともにやって来る。金融が壊れGMは破綻し、戦場の兵士は疲弊した。世界を背負い込む大義もカネもない。人権抑圧国と見下げていた中国が力を付け、米国の財政を支えるまでになった。日本とは勝手が違う。波瀾万丈の米経済に血液を送る心臓を胡錦濤が握っている。

オバマの役割は、膨張したアメリカの手じまいである。持ち前の誠実さで国民に語りかけ現実を理解させること。アフガン撤兵はその出発点になりうる。ゴルバチョフのように人気は下がるかもしれない。だが政治家の評価は歴史が決めるものだ。

アフガニスタン , アメリカ , オバマ , ゴルバチョフ , 山田厚史

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