特ダネ記者魂

2010年02月02日

検察シナリオを断固拒んだ、折れない信念

[山田厚史の特ダネ記者魂]

窮地に立ったとき、どれだけの人が助けてくれるか、人の値打ちはそんな時に表れるのかもしれない。初公判で「無罪」を主張し検察と対決する村木厚子元厚生労働省局長の姿に、時代の風が吹いているように見えた。

「民主党の国会議員に依頼された上司に頼まれ、障害者団体の実態がないことを知りながら、郵便割引の便宜を図ろうと偽造証明書を部下に作らせ、渡した」

これが検察が描く事件の構図。朝日新聞でも逮捕当日「敏腕キャリアなぜ」の見出しが躍った。「障害者問題がライフワーク」と働きぶりが紹介される一方で、「官僚として目的を持つと、手段を選ばない人」という障害者団体役員の否定的な証言が紹介された。

翌日には「元部長『議員絡み』と指示」が載る。「障害者自立支援法案をスムーズに成立させるため野党議員の依頼に応じる必要があり、議員絡みだからうまく対応してほしいと頼んだ」という趣旨の証言を元部長が特捜部にしている、という記事である。逮捕された係長も「村木課長(当時)から指示されてやった」と供述している、と報道された。

私も「法案絡みになると役所は政治家に弱い。真面目な人もこんなことをさせられるのか。あり得る話だ」と思った。検察のシナリオに沿って情報が世間に流れた結果である。

状況を変えたのは村木さんを知る人たちだった。「支援する会」がホームページを立ち上げ、村木さんのメッセージや近況を報告し無実を訴えた。捜査に疑問を投げかける記事が雑誌などに載るようになる。起訴事実を否認する村木さんは5カ月も身柄を拘束された。出たい一心で調書に署名する人も少なくない。「精神的拷問」にもめげず信念を貫いたのも、拘置所の壁を超えた交流が支えだったと思う。

公判前整理手続きが始まり、事態が動いた。検察の調べに「指示されてやった」としていた元係長が証言を翻した。「偽の証明書は独断で作った」と言うのだ。村木さんに不利な供述をした元部長は、なぜか起訴されていない。検察が描く「キャリア官僚犯罪」の構図は綻び始めている。

22日、記者会見した村木さんは語った。

「今までは、誰かが逮捕されたというニュースを見聞きすると、『悪い人が捕まった』と感じていたが、今では『間違いではないか』と気に掛けるようになった」

山田厚史 , 村木厚子 , 検察

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