特ダネ記者魂

2010年03月02日

不具合はどこに?トヨタが悩む「経営の品質」

[山田厚史の特ダネ記者魂]

 米国議会の公聴会でトヨタ自動車の豊田章男社長がたっぷりアブラを絞られた。「顧客軽視ではないか」と突っ込まれ「拡大のスピードに人材が追いつかなかった」と頭を下げた。ここ数年、拡大路線は急ピッチで、安全より利益が優先された気配が濃い。性能を誇るトヨタ車の「品質」が危ぶまれている。だがブレーキや制御システムなど技術問題の陰に隠れた「経営の品質」に問題はないのか。

「急加速の問題をいつ知ったのか」と問われ、章男社長は「昨年末ごろ」と証言した。米政府の運輸局長の使者がトヨタに来てリコールを迫った時期である。それまで深刻に受け止めていなかったのなら危機管理に問題がある。

 昨年社長になった章男さんはその10月、日本記者クラブで講演し「トヨタは実力以上に力を過信し、驕り高ぶりが経営を誤らせた」と率直に語った。随分すごいことを言うな、と思った。しかしこの言葉を素直に聞けない人たちも社内にいる。

「自分も副社長だったのに番頭さんたちがめちゃくちゃやった、と言っているに等しい」というのだ。番頭さんとは奥田碩、張富士夫、渡辺捷昭ら歴代の社長のことだ。

 トヨタの業績はこの3代で急拡大し、一貫して実権を握っていたのは日本経団連会長も務めた奥田さんだ。小泉首相とベッタリになったり行政に批判的なメディアに「広告を止めてやろうか」と発言するなど「驕り」と見られる言動があり、章男発言は的外れとは言えないがトヨタ内に微妙な波紋を広げた。

 奥田さんは親しい人に「トヨタはいつまでも豊田家でいいのか」と経営の世襲化に疑問を投げかけていたという。トヨタは世界で32万人が働くグローバル企業なのに章男さんの就任が「大政奉還」などと語られるような企業風土がある。創業家から見れば「目に余る番頭の振る舞い」、番頭からすれば「御曹司で大丈夫か」である。商売の拡大に追いついていないのは経営体制かもしれない。

 章男体制になって役員人事も大きく変わった。外された番頭さんにつながる人には不満がたまっている、とも言われる。「欠陥問題」はそんな中で起こった。大事な情報が社長に上がっていないとしたら組織病理の表れではないか。世襲で社長の座を射止めることは出来ても、よい経営が出来るかは別問題だ。存亡の危機は「若葉マークの社長さん」が器を磨く絶好の機会でもある。

トヨタ自動車 , リコール , 奥田碩 , 張富士夫 , 日本経団連会長 , 渡辺捷昭 , 豊田章男

バックナンバー

アエラ最新号

2012年2月13日号

2012年2月13日号

最新号キーワード

食の信念が揺らぐ 銀行窓販保険の魅力と危険 早慶女子「一般職がいい」 女心の複雑 「脱東電」で電気代26%節約 「驚異の儲け」グリーよ どこへ行く 絢香インタビュー 荻原博子の石巻ルポ 今年の花粉症 AKB48「恋愛で脱退」のルールと戦略 

2012年2月13日号
定価:380円(税込)
表紙:松田翔太/俳優

雑誌を購入

デジタル雑誌を購入

から検索
から検索