特ダネ記者魂

2010年05月25日

「抑止力」説揺るがす中台一体化の進展/米はそれを歓迎

[田岡俊次の特ダネ記者魂]

 沖縄に米海兵隊を駐留させている理由として「中台紛争防止のための抑止力」と唱える人は少なくない。だが近年、台湾は中国との経済一体化を急速に進め、米国がそれを後押ししている。抑止力論者はその現状に無知なのか、自説に不利な現実から目をそむけているのだろうか。

 台湾では2年前、「大陸との関係強化」を唱える馬英九氏が総統選挙で圧勝し、いまや中台の航空便は週に270便に拡大、昨年1万3千隻の商船が往復した。中国と東南アジア諸国連合の自由貿易協定が今年1月発効したため、台湾は競争上、不利にならないよう、同様の協定を中国に求め、6月に「経済協力枠組み協定」が締結される予定だ。中国が台湾からの輸入品の関税を段階的に廃止する一方、台湾が一部の関税を残すことを認める内容、と言われる。すでに台湾の輸出の30%以上、海外投資の70%以上が中国向けで、約200万人の台湾人が中国で勤務する状態だけに、関税もほぼ廃止になれば中台の経済一体化はさらに加速することになる。

 もし米国が将来の中国との対決を考えているなら、中台一体化に警戒心を抱き、妨害しそうなものだが、現実には米国は独立志向を抱いた陳水扁・前総統に激しい反感を示した一方、馬英九政権の親中政策を支持してきた。馬総統はハーバード大学で法学博士となった英語の達人で、令嬢2人も米国に在住し親米派で知られる。馬総統は5月、CNNで「我々は米国人が台湾のために戦うことを決して求めない」と述べて米国の視聴者を安心させ、中台接近の実績を誇った。これに関しJ・スタインバーグ米国務副長官は11日、「最近の中台関係の発展の方向は米国を喜ばせている」と評価した。「親米派すなわち親中派」の構図が生じるのは、米国自身が財政・経済上だけでなく、核拡散防止やテロとの戦いなど、安全保障面でも中国の協力を求めざるを得ず、基本的に親中に傾いているからだ。

 日本では政治家も、防衛・外交当局者も、メディアもなお「中台が対立関係にあり、米国は台湾を支持する」との冷戦時代の観念から脱却できていない。沖縄問題だけでなく、日本の対外政策を誤りかねない危険な錯覚だ。

J・スタインバーグ米国務副長官 , 中台一体化 , 米海兵隊 , 経済協力枠組み協定 , 馬英九

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