特ダネ記者魂

2010年08月24日

損失9千億円/たたき売るなら地域に任せろ

[山田厚史の特ダネ記者魂]

 グリーンピアでも損害は1900億円だった。年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)が明らかにした年金施設の売却損は9千億円を超えた。国が投じた費用は1兆1300億円、売って回収できたのは2割足らず、2221億円である。

 毎月の給与から天引きされる社会保険料は決して軽くない。税金と同じように国庫に収納されるが、税は一般会計に、社保料は社会保険庁の特別会計に回る。「法律で使途が決められている」と特別会計は国会でチェックされることもほとんどない。

 年金特別会計だけで127兆円。大部分は国債など証券で運用されているが、一部は貸しホールや宿泊施設などに充てられた。「年金加入者の福祉の増進」という建前だが、全国に生まれた公共施設は天下る役人の受け皿になった。採算意識に乏しく「公共の宿」や「厚生年金会館」は着実に赤字を重ねた。

「赤字でも低料金のサービスを利用者は喜んでいる」という理屈は、日本経済が元気で運用利回りが5~7%ぐらいだったころは許された。しかし低金利の到来で、年金危機が深刻化し小泉政権の時、施設売却が決まった。非効率な官業の典型とされたのである。

「新宿の厚生年金会館が120億円とは驚いた」と不動産業界の人はいう。地下鉄の駅から徒歩5分に1800坪(6151平米)。坪660万円は超買い得、ちょっと前なら坪1千万円は軽く超えたというが「いま買えるのは資金力のある大手。不動産投資に銀行はカネを貸しません」。

 1961年に開業、アーティストを育ててきた歌謡曲の殿堂だった。新宿区は「街の機能にとって大事な施設」と存続を求めたが、例外は認められず、ヨドバシカメラが買い取った。

「カメラ博物館など検討していますが具体的にはなにも決まっていません」という。

 官業の失敗→国家のお荷物→たたき売り。極めて分かりやすい処理だが、公共施設には取り巻く地域があり利用者がいる。「そんな声を聞いていたら処理が遅れるばかり」と役人は言うだろう。だが大事なのは処理することより、活かして使う知恵ではないのか。

 売却された301の施設はカネをかけ、いい場所に立っている。9千億円損して売るぐらいなら、再利用を地域に委ね「まちおこし」のアイデアを競いあう舞台にする。そんな政策があってよかった。「新しい公共」とはそういう実践から生まれる。官の失敗を責めても疲れるばかり。人々のエネルギーを前向きに使う仕掛けを考えてほしい。

グリーンピア , まちおこし , 公共施設 , 厚生年金会館 , 年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO) , 赤字

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