特ダネ記者魂

2010年08月31日

海保のヘリ墜落/隠蔽体質変わらず2年前にも大失態

[田岡俊次の特ダネ記者魂]

 8月18日、香川県多度津町沖で海上保安庁のヘリコプターが送電線に触れて墜落した事故では、当日そのヘリが体験航海中の司法修習生のために展示飛行を行っていたことを第6管区海上保安本部(広島)が隠して記者発表したことが問題となり、同庁は広報体制の見直しを迫られている。だが実は2008年にはこの事故とは比較にならない程重大な広報ミス事件が起きていた。

 同年6月10日、尖閣諸島付近で巡視船「こしき」(1360トン)が台湾の遊漁船「聯合(リェンハー)号」(30トン)と衝突、沈没させた際、第11管区海上保安本部(那覇)は「こしきは聯合号の右後方から迫ったが、同船はジグザグに走り、右に急旋回したため衝突」と発表、当時の冬柴国土交通相も記者会見で正当性を強調した。ところが釣り客の一人がビデオ撮影をしていて、直進する聯合号に「こしき」が右から突っ込んだ状況が台湾で放送されたため、台湾メディアは「意図的衝突」と報道した。

 台湾立法院では劉兆玄(リウチャオシュワン)行政院長(首相、当時)が「一戦を惜しまず」と答弁、台湾海軍は最大の基隆級駆逐艦(9570トン)に出動準備を命じた。台湾の軍事記者達は日、台の海、空戦力比較を論じて、戦争熱を煽った。15日になって第11管区海上保安本部長が巡視船の過失を認めて遺憾の意を表明し、台北にある日本の交流協会の総務部長が船長宅を訪れて賠償の意向を示したため、台湾は軍艦の出動を取りやめた。当初から陳謝していればこんな騒ぎにはならなかっただろう。

 私は08年6月30日号の本欄でこの事件を報じ「正直は最良の策」と説いたが、海上保安庁ではこの失態の教訓が生かされず、またも愚劣、無意味な隠蔽が行われていたことに暗然とせざるをえない。海上保安庁は事実上、国境警備隊的な機能を持つだけに、近隣諸国との摩擦に直面する機会は自衛隊より多いだろう。その際の沈着、正確な報告は、政府が対外関係で適切な判断をするために不可欠であり、公正な広報は自国、他国の世論が激昂するのを防ぐうえで効果がある。今回の事故がその契機となるなら犠牲も少しは報われるというものだ。

ヘリコプター , 墜落 , 巡視船「こしき」 , 広報ミス事件 , 海上保安庁 , 遊漁船「聯合(リェンハー)号」 , 隠蔽 , 香川県

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