朝倉かすみ[ぜんぜんたいへんじゃないです。]

2009年01月30日

家電

YES WE CAN。わたしの周辺には手強い電化製品がたくさんある。きょうびの家電はことごとく機能満載だ。わたしが完璧に使いこなしているものは皆無にひとしい。

掃除機くらいじゃないのか。あれって基本的にゴミを吸い込むのみの機械だし、吸い込みがわるいな、と思ったら紙パックを交換すればいいだけなので取り扱いも簡単だ。

わたしの持っている「電化製品をあやつる能力」をマックスまで投入しなくても使用できる。少なくとも、PCやデジカメ、プリンタ、携帯のように使えただけでやりきった気持ちにはならない。その証拠にひと工夫する余裕もある。自動巻き取りコードに、長い長い延長コードを付けているのだった。そしたら、コンセントを抜かずに全部の部屋を掃除できる。便利だ。

いや、もっと便利な掃除機があるのかもしれない。電化製品だけでなく、あらゆる「商品」は「便利」を目指している。そんなに便利じゃなくてもいいのに、と思うほどだ。

掃除機をふくめて、我が家の家電の大多数が10年選手なのだった。オットが独身時代から使っていたり、結婚を機に揃えたりしたものが、わたしたちの生活をささえている。

家電の10歳を人間の年齢で勘定すると、いくつになるのかは知らないが、ものによっては老化がかなり進んでいる。

たとえば、洗濯機。脱水の途中でときどき止まるようになった。「......う?」という音のあと、静まり返る。あるいは、シャワートイレ。シャワー部分が機能しない。ただただ便座を温めているきりだ。ガス給湯器もあぶない。追い炊きしようとボタンを押しても、黙り込むことがある。普段はボタンを押すやいなや、作動音が聞こえてくるのに。二度修理したのだが、全快しないのだった。

元気なのはテレビだ。矍鑠(かくしゃく)としている。もちろん地デジには対応していない。薄型でもない。そもそも画面がフラットですらないのだ。焼き立てのパウンドケーキのごとく、うっすらと隆起している。来客のなかには失笑するひともいるが、「映る」のだから、なんの不足もない。

たしかにリモコン操作にたいする反応は相当遅くなった。リモコンの電池を替えても変わらない。寄る年波だと理解している。繰り返すが、でも、映るのだ。我が家のテレビは本来の役目をりっぱに果たしている。

だから、なかなか買い替えられない。ちゃんと壊れてくれないと、新しいのを購入する踏ん切りがつかない。電化製品はおおむね高価だし、まだ使えるものを捨てるのは冥利がわるい。というか、単純に勿体ないのだ。北海道弁でいうと「いたましい」ってやつだ。

面倒臭いということもある。ネットやカタログで集めた情報をじっくりと検討し、我が家にとっていちばんよい(便利な)ものを、ひとつだけ選ばなければならない、と思えば、ちょっと気が遠くなる。

わたしはただ洗濯機が欲しいだけなのに、という心持ちになる。スペースに合うサイズで、衣類を洗えたらそれでいいのだ。シャワートイレなら、便座がほかほかしていて、肛門をゆすいでくれたら御の字だ。ガス給湯器はこちらが入りたいときにお風呂につかれるようにしてくれたら、ほかにはなにも望まない。テレビは映ればいい。

買いに出かけるのも億劫なのだった。どの商品を購入するか、心に決めていたはずなのに、店員さんのひとことであっけなく揺らぐ。「我が家にとってよい(便利な)もの」と、「みんながよい(便利な)としているもの」との狭間で、軸、ぶれまくり。「当店売れ筋No.1」や、「今なら最大25%のポイント還元」というPOPにわたしは弱い。

店員さんから助言を受ける前、心に決めた商品の現物を目にした段階で、あ、ちがう、と感じたりすることがあるのも不思議だ。デザインにはとくにこだわらないつもりでいたのに、俄然、恰好いいのが欲しくなるのだ。

機能や使い勝手、もしかしたら便利さよりもデザインを優先したくなる。トレンディドラマ(死語)に出てくる主人公の部屋に置いていそうなスタイリッシュ(死語)な家電こそがわたしの欲するものだという気がしてくる。そんなオシャレ家電が我が家に似合うはずもないのに。トレンディドラマとかいっている時点でわたしのセンスは微妙なのに。

胸のうちでの紆余曲折を経て、買い物は終了する。会計をすませたり、配達伝票に我が家の住所を書き込んだりするとき、「(この商品で)ほんとうによかったのか」といつも思う。たぶん永遠に使わない便利な機能やデザイン、価格などとものすごく中途半端に折り合った感じがする。なんでもいいからとにかく買いたい、そうしたら楽になれそうな気がする、というような心境にはまり込んで商品を決定するケースがわたしには多い。

商品が届いたら、梱包を解き、段ボールをつぶしたり、緩衝剤の発泡スチロールをある程度小さくちぎってゴミ袋に入れなきゃならないんだなあと考えたりもする。大型家電の場合は設置もお願いするから、もくもくと作業をする配送のかたをもくもくと見ていなければならないのだなあ、と思う。わたしは軽い世間話とか労いの言葉をかけるのがどうにも下手なのだ。

しこうして、家電が我が家にやってくる。馴染みの薄い機械や新しい機種に接すると、どうしても「あがって」しまう。粗相のないように、とへりくだるところがあって、仲よくなるまで時間がかかる。オットはもっと時間がかかる。かれはいまだにテレビの録画ができないし、留守電を再生する際もおっかなびっくりだ。携帯もつねに持ち歩いているのだが、電源は絶対入れない。意味ないじゃん、ということで次回はオットの生態に迫る。わたしが思うに、かれは、少し、奇妙だ。

家電 , 朝倉かすみ

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