2008年09月12日

小5妊娠映画に「検閲」

高評価のファンタジー作品だけど

編集部 田村栄治


小5の女の子が、同級生との間にできた子どもを出産――。

そんなショッキングな内容の映画『コドモのコドモ』をめぐり、ロケ地になった秋田県の県庁が、「検閲」とも取れる動きをみせていたことがわかった。県は検閲を否定するが、「表現の自由を萎縮させる」という批判が出ている。

「小学生の子どもが県内のスーパーのトイレで出産する場面があるらしい」

そんなメールが秋田県に寄せられたのは7月下旬。内容を問題視し、県に上映禁止や年齢制限などの措置を求めていた。

◆端緒は匿名メール2通

『コドモのコドモ』は、さそうあきら氏の同名の漫画が原作だ。胎内に宿った命にとまどいながらも、同級生たちの助けを受けながら出産する小学生が描かれている。適当な廃校と降雪があった秋田県能代市で撮影され、子どもたちを含む数百人の住民がエキストラとして参加した。

規制を求めるメールは2通だけでいずれも匿名だったが、県は敏感に反応した。映画配給会社に対し8月上旬、ビデオかDVDを送るよう文書で要請。「県青少年の健全育成と環境浄化に関する条例」が定める「有害興行」に該当するおそれがあり、「県の審議会にかけるかどうかを、まず我々が常識で審査する必要がある」(福原秀就県民文化政策課長)というのが理由だった。

検閲は憲法で禁じられている。判例では、国や自治体など行政が、本や映画など表現物について事前に審査し発表を規制することが、検閲に当たるとされる。

「秋田県がしたことは、実質的な事前検閲。こうした無造作な動きが、表現活動をどんどん制限していく」

そう批判するのは、服部孝章立教大教授(メディア法)だ。右崎正博獨協大法科大学院教授(憲法)も、「行政は公開された作品に対して事後的に対応するのが原則。条例に定めがない今回の行為は、表現の自由において致命的」と話す。

◆映画館組織は高い評価

『コドモのコドモ』が物議をかもす作品であることは間違いない。配給会社や能代市には公開前から、小5の妊娠が描かれていると知った人たちから「親として単刀直入に不快」「公開中止を切に願う」といった声が寄せられている。インターネットの掲示板などにも、否定的な意見が多数書き込まれている。

こうした反応に、秋田県は怖じ気づいたのかもしれない。ただ、映画業界の自主規制機関である映倫管理委員会(映倫)は、年齢制限の必要がない「一般」作品に分類。県は直接映倫に問い合わせ、そのことを確認している。さらに、ロケ協力者としてすでに試写を見ていた能代市職員にも電話をし、メールで指摘された場面が実際にはないことも聞いていた。それにもかかわらず審査に乗り出した県の狙いは、何だったのか。

『コドモのコドモ』を鑑賞した人たちは、作品を高く評価する。全国37都市の映画館でつくる「シネマ・シンジケート」は「良質」の映画だとし、全館での公開を決めた。8月下旬に能代市であった試写会では、鑑賞を終えた親子たちが「おもしろかった」「命の大切さを教えてくれた」と感想を話した。

「多くの人に見ていただいたうえで、意見や批判を聞けたらいいなと思っている」と、萩生田宏治監督。

寺田典城秋田県知事に取材を申し込んだが、「担当課に任せているので、知事から話すことはない」(佐藤博秘書課報道監)との返事だった。

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