2008年09月12日

決めゼリフでお客をつかめ

「脱マニュアル」で今日も繁盛

ライター 野村昌二


◆3万2000円を衝動買いさせる「決めゼリフ」

「さあ! 勇気を出して試着してみて!!」

洋服を手に、身を乗り出しながらこちらの目をしっかり見つめ、語りかけてくる。東京都新宿区。目白通り沿いにあるブティック「S・Y・M・R・K(シマーク)目白店」オーナーで店長の中島繁敏さん(54)の決めゼリフは、情熱にあふれている。

先日、イタリア製の黒いワンピースを買った30代の女性もそんな一人。当初、

「黒い服が欲しい。これなんてぴったり。だけど似合うかな」

なんて迷っていると、中島さんは目を見つめながら、いつものセリフを吐いた。

女性は言われるままに試着。デザインは素敵で仕立てもいい。素材も季節にピッタリ。ちょっと高いと思ったが、3万2000円ナリを衝動買いした。

◆マニュアルトークじゃ聞けない「うまーい!」

「表3秒、裏3秒、ハイ!!」

呪文でも秘密の暗号でもない。

焼き肉店「ホルモン稲田」(東京都品川区)の代表、稲田智己さん(28)の決めゼリフは通称「3秒ルール」。

「3秒で十分。本当は生で食べてもうまい肉です」

先日、彼氏と一緒に初来店した20代の女性は「裏メニュー」をパクッと食べた瞬間、人目も気にせずキッチンにまで届く大声で、「うまーい」と叫んだ。

「うれしいですね。僕の疲れが吹き飛ぶ瞬間です」

稲田さんはニカッと笑う。

◆決めゼリフの秘訣は本音のサービス

こうした決めゼリフは、徹底したサービスの裏返しでもある。

「いつでも飛んでいきます!」

東京都町田市の町田街道沿い。「でんかのヤマグチ」の店長、熊沢茂さん(52)のこの決めゼリフにウソはない。

電話1本で顧客の家に駆け付け、電球1個、蛍光灯1本でも取り換える。テレビの配線も無料で引き受ける。冷蔵庫が故障したら、メーカーが修理に来る前に大量の氷を届け、食品が腐るのを防ぐ......。

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