2008年09月21日

名ばかり正社員

不安感利用しワープア並み

労働経済ジャーナリスト 小林美希


◆嘱託社員=正社員

リカコさん(35)がフランスの高級ブランド「エルメス」の人事担当者から電話をもらったのは、2004年8月13日。「おめでとうございます。合格の連絡です。時計の販売経験がないから、とりあえず最初は嘱託社員でお願いします。」インターネット求人サイトの「正社員募集」を見ての応募だったため、当然正社員だと思っていた。

「とりあえず嘱託」の意味を尋ねたが、明確な回答はなかった。直属の上司に相談できたのは、働き始めて2年ほどたってから。リカコさんは人事部に「いつ正社員になれるのか」と尋ねたが、「様子を見させてください」と繰り返されるばかり。

彼女の働きぶりが悪かったわけではない。06年度は前年比大幅売り上げ増を達成、全店舗での時計コーナーの売り上げ伸張率1位となり、07年1月には表彰もされている。その後人事面談で、「正社員になれないなら転職を考える」と詰め寄ると、「(本採用について)様子を見させてください。1年後には良い返事ができると思います」と人事部から言われたという。

◆その間にお考え下さい

状況が一変したのは08年に入った頃からだ。3月上旬の人事面談でこう言われた。「今の会社の状況はおわかりですか?売り上げ不振で、一人ひとりにお考えいただいております」

まもなく会社から郵送された雇用契約書には、期間は08年4月1日~9月30日までとされ、「契約終了後、雇用契約の更新はしないものとする」と記されていた。納得できないリカコさんは、契約更新のサインを留保。7月に日本法人エルメスジャポンを相手取って「正社員としての地位確認と解雇通告の差し止め」を求め、東京地裁に提訴した。

◆有期雇用と試用は別

訴訟を担当する東京法律事務所の板倉由実弁護士は、怒りを露にする。「雇われる側の労働者にとって労使が対等ということはあり得ず、おかしいと思っても、クビを恐れて契約書にサインしてしまう。『様子を見たい』と、有期雇用契約をあたかも試用期間のように言うが、正社員の試用期間と有期雇用契約は法的に別。そして合理的な理由なくあまりに長期に試用期間に留めておくことは公序良俗に反する」

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