2009年01月18日

帰りたくても帰れない

高くなる米メキシコ国境の「壁」

編集局 萩 一晶


◆故郷に帰れず米国に留まる移民

ロサンゼルスの、のっぺりとした街並みを見下ろす高層ビル。その10階にあるオフィスで、中米グアテマラ出身のフェリックスさん(36)が食い入るように大画面のテレビを見つめていた。

「みな大きくなったなあ。ちゃんと、ご飯は食べているか」

画面の向こうで、3人の男の子が手を振っている。フェリックスさんが3年前に祖国を出てから、一度も会っていない故郷グアテマラ市で暮らす息子たちだ。

国境を越えて以来、長く家族と離ればなれの日々を送る移民一家を、画面上で「再会」させる新しいビジネスが最近、米国で広がっている。

再会ビジネスを営むアミーゴ・ラティーノ社のガブリエル・ビグリア社長(39)は、自らもグアテマラ移民だ。5年前にロサンゼルスで始めた事業は急成長し、今や米国内ではワシントンやアリゾナ州など25カ所に事務所を持つ。中南米側にも11カ国、40事務所にカメラを置き、米国のオフィスと結ぶ。訪れた移民らが支払う通信費用は30分で40ドルだ。

全米の不法移民は推計約1200万人。8割が、中南米系の移民とその子孫であるラティーノ(ヒスパニックともいう)だ。ラティーノ人口は年々増加し、今や約4300万人。アフリカ系(黒人)を抜き、米国で最大のマイノリティー(少数派)になった。米国勢調査局の推計では、アジア系やアフリカ系を含めマイノリティーの人口は2042年に米国の総人口の半数を超え、マジョリティー(多数派)に転じる見通しだ。

人口動態の急速な変化に、白人保守層の間では反発が強まっている。9・11テロ事件もあって「反移民」感情が高まり、移民当局は各地で不法移民の取り締まりに乗り出した。

米メキシコ国境では、中南米からの密入国を「入り口で防ごう」と、新型フェンスの建設が着々と進む。高さ約4・5メートル。国境を越える人の流れを、まさに物理的に断ち切るべく出現した「要塞」のような壁だ。

しかし、その「効果」については疑問視されているーー。

バックナンバー

アエラ最新号

2012年2月13日号

2012年2月13日号

最新号キーワード

食の信念が揺らぐ 銀行窓販保険の魅力と危険 早慶女子「一般職がいい」 女心の複雑 「脱東電」で電気代26%節約 「驚異の儲け」グリーよ どこへ行く 絢香インタビュー 荻原博子の石巻ルポ 今年の花粉症 AKB48「恋愛で脱退」のルールと戦略 

2012年2月13日号
定価:380円(税込)
表紙:松田翔太/俳優

雑誌を購入

デジタル雑誌を購入

から検索
から検索