2009年07月05日

マグロが百貨店を救う

消費低迷のいま、集客の目玉に

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ライター 野村昌二


◆思わずくぎ付けになる手際のよさ

見事な庖丁さばきに歓声があがった。

「ウワァ、すごいわね!!」

食い入るように見入っていた年配の婦人が声をあげた。私も初めて見たが、黒光りする巨体が目の前で手早く切り分けられるさまに、くぎ付けになった。

マグロの解体ショーだ。

金曜午後3時半。東京・日本橋三越本店の本館地下1階鮮魚コーナー。多くのお客が見守る中、丸々と太った高級クロマグロ(本マグロ)が、職人の手で手際よくおろされていった。

真っ赤な切り身がパック詰めされると、飛ぶように売れていった。さばかれたばかりで、味も脂がたっぷりのっていてコクと旨みがある。価格も、天然ものと比較してお手ごろ。中トロだと、天然ものが100グラム約4000円なのに対し近大マグロは約2000円で売られる。三越のバイヤー篭島正明さんによれば、日本橋三越本店で近大マグロを使った解体ショーを始めたのは2005年9月。

「安心で安全。しかも新鮮な切りたてを即売できるので、集客につながると考えた」

基本的に毎週金曜に行われるこのショーは、いまや同店の呼び物の一つ。「一見さん」もいるが、何度も訪れるお客も少なくない。

◆百貨店の「救世主」

百貨店があえいでいる。消費の低迷が直撃し、日本百貨店協会が発表した3月の全国の百貨店売上高は、前年同月比13・1%も下落した。13カ月連続の前年割れで、過去最大の減少幅となった。消費不振の出口は依然見えない。だが、百貨店側でも手をこまぬいているわけではない。起死回生をかけ知恵を絞るが、そんな中、「マグロの解体ショー」が売り上げアップの「救世主」として注目されている。

「集客の目玉と考えました」

と話すのは、東京・池袋の東武百貨店池袋店の広報担当者。昨年3月、地下2階の鮮魚店「魚力」が開店を機に、マグロの解体ショーを始めたのだ。

開催日は第2、第4土曜の月2回。使うマグロは、鹿児島県の奄美大島や甑島の沿岸で育った養殖クロマグロが大半で、ショーがある日の朝、築地市場からトラックで運ばれて来る。

広報担当者によれば、百貨店全体の売り上げとの関連性は不明だが、解体ショーを目当てに訪れるお客は確実に増えたという。

ほかにも、西武池袋本店(東京・池袋)では火曜と土日祝日、さいか屋川崎店(川崎市)では毎月第2土曜。阪急うめだ本店(大阪市)に至っては、毎日開催している。

これほどまでマグロの解体ショーが受けるのはなぜか。日本人がマグロ好きというだけでは説明がつかない。しかも「常連」が多いのだ----。

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