2010年01月08日

「幸せ」にすがらない

5人の男女に学ぶ不安時代の処方箋

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編集部 伊東武彦、木村恵子 写真 高井正彦


49歳男性の場合 いまの幸せ点数 100点
キャリアを捨てて一人になってみる


◆お金に頼らない幸せ

冬の日がやわらかく溜まる児童公園のベンチで、芳根聡さんは弁当箱を開く。

49歳。時給1000円の郵便配達員だ。

損保会社の契約社員として働く6歳年下の妻、通信制高校2年の息子と中学1年生の娘がいる。手取りは、夫婦合わせて30万円程度だ。

大学を卒業して、広告の世界で働いてきた。1992年に作った会社は業績を伸ばし、2005年には、BS番組のキャラクターを使ったライブドアとの共同事業を始めた。ようやく黒字化し、次の展開を考え始めた矢先に、社長が逮捕された。

事業は頓挫した。仕事への意欲が薄れた。「会社員になろう」と訪ねた人材会社で紹介されたハードウエア会社のオーナーの下で子会社として再出発した。じきに親会社のずさんな経理処理に気づいた。オーナーに指摘すると、突然、代表取締役を解任された。

鏡を見ると、極度の疲労と人間不信を抱えている自分がいた。生き方の訓練ができるのではないか、と思って、北海道のアイヌの里を訪ねようと思い立った。

「アイヌの運動家のお宅の、2畳半くらいの部屋に住んで、昼間は農作業を手伝い、夜は自分たちで炊事をして、寝る。自前でできることだけをする生活をしているうちに、気づいたんです。右肩上がりという幻想に騙されない生き方をするには、家族が仲良く生きていけたらいいんじゃないか、って」

冬の東京に戻った。この時期ならアルバイトがあるだろうと、郵便局に行った。

「もともと、人と人がつながる場の提供が、自分にとっての広告プロデュースでした。郵便事業には、その可能性がありました。全国の全世帯に手渡しで情報を届けられる」

張り切って働いた。暑中見舞いはがきのセールスが評価につながると聞き、ノルマをクリアした。しかし、時給は上がらない。

それでも、「お金に頼らない生き方」という幸せの種をつかんだことには変わりないーー。

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