2010年03月07日

親年収200万円でも東大生

経済格差に克った7人の家庭と素顔

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編集部 甲斐さやか ライター 庄村敦子


生まれて初めて、母を恨んだ。

「現役で地元の名古屋大に合格しないと、あなたを大学には行かせられない」

東京大学理科一類2年の朝倉彰洋さん(21)は高3の4月、母からそう宣告された。

8歳のころ、父の暴力が原因で、両親が離婚。以来、母は必死に働いて自分と4歳下の弟を育ててくれたが、母子家庭の暮らしは苦しかった。

進学校の愛知県立時習館高校に入学後、「より上を目指したい」と東大受験を決意した。なのに、なぜ、自分だけがこんな思いをしないといけないのか。ただ、貧乏な家に生まれついたというだけで──。

お金がなくても東大に行く方法はないか、必死で探した。その結果、年収約250万円の母子家庭出身で弟がいる自分なら、授業料が全額免除になりそうなこと、大学の三鷹国際学生宿舎(三鷹寮)に入居できる可能性が高く月1万円程度の家賃負担で済むことがわかった。さらに、難関大学への現役合格を条件に、入学一時金30万円と月額6万円が4年間給付される、民間財団の奨学生にも選ばれた。母はようやく東大受験を認めてくれた。

だが、大学入試センター試験を終え、東大の願書を書き始めようという時期になって、母は、

「やっぱり無理だ。諦めて名古屋大を受けてくれ」

と言い出した。理由は「浪人させるお金がないから」だった。東大模試の結果が「C判定(合格可能性40%)」だったことが、母を不安にさせたのだろう。めったに涙を見せない母に泣きながら懇願されて、ぐらり、と心が揺れた。強引に東大に出願したものの、精神的な動揺が影響し、不合格。

高校は卒業したけれど、何もすることがなかった。進学校出の高卒が、正社員で就職などできるわけがない。フリーターになるしかなかった。

ただアルバイトするだけなら、勉強しながらだってできる。そう思った朝倉さんは、豊橋市内の河合塾に通い始めた。母がため続けていたお年玉まですべてかき集め、費用を捻出した。

1浪して東大に合格。当初の計画どおり、授業料は全額免除され、三鷹寮に入居している。仕送りはないが、月5万円の給付奨学金を受けており、十分に生活できる。アルバイトは予備校で週2回と、勉強の妨げにならない程度に抑えている。

「入学してわかったのですが、東大生対象の給付奨学金はかなりの種類があります。貧乏人でも東大に行くことは十分可能なんです。ただ、それがあまりに知られていない」

と朝倉さんは言う。

小学生時代から塾に通って中学受験をし、有名中高一貫校から東大に入る。父は大企業の社員で、年収は1000万円以上──そんな「平均的東大生」には当てはまらない、朝倉さんのような「貧乏東大生」は、少なからず存在するーー。

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