2012年01月06日

キューバ人はなぜ幸せか

お金はないけど愛はあふれている


ライター 斉藤真紀子 写真 本社・馬場岳人


 キューバ人は、胸をはって街を歩く。明るい日ざしと、行き交う人々の「熱い視線」を同時に浴びながら。

 老いも若きも、鮮やかな赤、黄、青、白を身にまとう。男たちは短いシャツのそでから、たくましい腕をのぞかせ、女たちはタイトなスカートやデニムで、身体の曲線を強調する。

「ムイ・リンダ」(とても美しい)

「ミ・プリンセサ」(ぼくのお姫様)

 すれ違いざま、男は女にお世辞とも愛想ともつかぬ賛辞を投げる。スペイン語で「ピロポ」と呼ばれるこの冷やかし、慣れない身には少々くすぐったい。

 3年前、キューバを旅した。かつて栄華を極めた旧市街の建物は朽ち、食糧も生活物資も足りない。しかし、街には陽気なサルサの音楽が鳴り、スタッカートのきいた早口なスペイン語がこだましていた。

 将来を憂いたり、落ち込んだりしないんですか。そう聞くと、こんな答えが返ってきた。

「キューバには、ピザの宅配がないから、『引きこもり』になれない。ハッハッハ」

「職場に行くまでに5人は話しかけてくる。冗談言って笑っているうちに、何でイライラしてたのか、忘れてしまうんだ」

 私はアエラでこの数年、日本の20代、30代の恋愛事情を取材してきた。結婚や家庭を持つことに後ろ向きな人も多かった。その理由として「経済状況への不安」を口にした。

 だがキューバは、欧州危機やリーマン・ショックのずっと前から深刻な経済状況が続いている。ソ連が消滅した1990年代は食糧すら底をついた。59年に革命で誕生した社会主義国家は、崩壊を囁かれつつ半世紀以上持ちこたえてきた。近年は国民の自営業や、住宅や車の個人売買を認めるなど経済改革も進めてはいるが、アメリカの経済封鎖の影響もあり、「平等に貧しい」状況が続いている。

 それでも国民の幸福度を示すイギリスのNEF(ニューエコノミクス財団)発表の地球幸福度指数で、2009年キューバは7位だった。日本は75位。不況といっても経済的にははるかに恵まれている日本とキューバの、この落差はなぜ? 東日本大震災という人生観が揺らぐほどの災害があり、11月には国民の幸福感が高いと言われるブータンの国王夫妻の来日で、日本人は「幸せとは何か」という命題を再び突きつけられている。

 先の地球幸福度指数は「生活満足度」なども考慮している。決して経済的に恵まれているとは思えない中南米の国々が、上位10カ国中9カ国を占める。これは単にラテンの人々の気質によるものだろうか。経済の困苦を抱えながら幸福感を押し上げているものの「正体」は何? それを探るために、再びキューバに出かけたのだったーー。

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