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「その時」のためにできること
備えても、憂いは消えないけれど…
「職場の無理解」と「自分のためらい」。
親の死を経験した人たちの話から、親の死に目に会うことを妨げる最大の壁はこの二つだということがわかった。
壁を取り除く方法はないのか。
すでに、準備をしている人たちがいた。職場の理解を得るためにも、ためらうことなく職場を離れるためにも、まずは、親の体調の変化を「早く知る」ことが肝要だ。
東京都目黒区に夫(50)と高校1年の息子の3人で暮らす行政書士の百瀬まなみさん(47)のもとには、毎朝9時に一通のメールが届く。
「題名 2012/01/09 歩数」。
長野県松本市で一人で暮らす母(75)が、前日に歩いた歩数の通知メールだ。1月9日は「173歩」だった。「ちゃんと生きているな」と確認したら、メールは削除する。
母が使う携帯電話「らくらくホン」には、歩数計機能に加え、一日の歩数記録を指定した時間に指定したアドレスに自動送信する機能がついている。昨年4月、百瀬さんが贈ったものだ。
古くなった母の携帯を買い替えようと思いショップに行くと、店員にすすめられた。それまでも、毎週末には電話して、近況報告を兼ねて母の様子を確認していた。しかし母も年を取り、より頻繁に状況を知りたいと考えていた矢先のことだった。
いま、母は血圧が低い程度で比較的元気だが、高齢なのでいつ何が起こるかわからない。東京から松本までは電車で片道3時間近くかかる。仕事の都合で駆けつけられず、死に目に立ち会えない可能性も考えていた。
母は常に携帯を持っているわけではないので歩数は少ないけれど、毎朝届くメールで「母の変化」をある程度察知できる。前日の歩数が「0歩」だったことが何度かある。さすがに焦り、すぐ母に電話。その度に、「昨日は持たなかったのよ」とケロッとしていた。
百瀬さんの思いは一つ。
「最期は母の手を握り、『ありがとう』と言いたいんです」

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